活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
森博嗣『クレィドゥ・ザ・スカイ』
森博嗣『クレィドゥ・ザ・スカイ』中央公論新社、2007
313p、1800-、シリーズ最終巻


待ってました!
というわりには、6月に刊行されたのに、今ごろ読む(笑。
Cradle the sky.

キルドレと呼ばれる人々は寿命で死ぬことがなく、
その多くは、戦闘機乗りなどの死に直結する仕事を選ぶ。
何故キルドレが現れたのか、一部では研究がおこなわれ、
ひとりの優れた科学者が、そのメカニズムを解明した。
それ故に追われる科学者。
また、戦争が見せ物として、また政治的取引として、
ショウ的におこなわれることに対する抵抗活動をする人々も
存在していた。

主人公「僕」は、自分の名前も喪失した状態で目を覚ます。
どうやら入院していた病院から脱走し、
昔なじみの娼婦に保護されたらしい。
断片的に思い浮かぶ、さまざまな人の名前。
しかし自分の名前は出てこない。
何度も陥入する草薙の幻影。
しかし幻影は「僕」を本当に殺しはしない。

「僕」は誰か。
しかしどこへ行きたいのかだけは明確だ。
空へ。
地上を離れ、少しでも軽く、少しでも早く。

耳の奥には誰のものかも思い出せない懐かしい声。
ブーメラン、飛んでいるか?
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『スカイ・クロラ』を読んだときの予想↓

  ナ・バ・テア(草薙)栗田登場
  ダウン・ツ・ヘヴン(草薙)函南登場
  フラッタ・リンツ・ライフ(栗田)
  スカイ・クロラ(函南)作中では栗田が死んだことに

からいくと、これはスカイ・クロラ後、の物語。
ティーチャの子を生んだことでキルドレでなくなった草薙の、その後。
ときどき函南。
ただ単行本末尾のシリーズ紹介では、『フラッタ』の次に
この『クレィドゥ』、そのあとに『スカイ・クロラ』なので、
そっちのが時間軸としては正しいのかも。
ただ今回自分はこれを、『スカイ・クロラ』のあととして読んだ。
函南はやはり、草薙の子であったのかな。
しかし、「僕」が誰なのかは、決定的には明らかにされない。
その居心地の悪さ。
我は何者であるかを明確に言挙げするところから話が始まる
神話やら説話やらの手法に、おそらくは意図的ではなく、
この話は逆らっている。
語り手が何者であるか、自分は誰の話を読んでいるのか
(読まされているのか)ということが不明瞭であることが、
こんなにも心細いことであるとは。

これでシリーズ全巻が揃った。
やばい。
単行本で全巻揃えたい(笑。
このカバーは秀逸だ。

20070907借
★★★
小説 作家 森博嗣 / comments(0) / trackbacks(0)
森博嗣『どきどきフェノメノン』
森博嗣『どきどきフェノメノン』角川書店、2006(単行本2005)、
287p、838-


英題 A phenomenon among students.
フェノメノン?
「人に聞く前に自分で調べろ」主義のはずだが、
思わず相方(理系)に聞いてしまう。

「フェノメノンて何?」
「現象」

…そんな単語、普段使わないよ、わたしは…

無機化学専攻の大学院博士課程の学生の女の子が主人公。
この主人公に感情移入できる読者ってどれだけいるんだ(笑。
詳細はよくわからないけど、なんか理系の研究室の、
D1の女の子とM1の男の子がくっつく話。

教訓。
1・酒は飲んでも飲まれるな
2・口説くときは身辺調査をおこなってから
3・年下には気をつけろ

わりとおもしろかったけど、別に読まなくてもいいような
気がしてしまうくらいの感じ。
とりあえず、みんなハッピーエンドでよかったね。

★★
20070113借
小説 作家 森博嗣 / comments(0) / trackbacks(0)
森博嗣『フラッタ・リンツ・ライフ』
森博嗣『フラッタ・リンツ・ライフ』中央公論新社、2006、
294p、1800-


で、シリーズ4作目、Flutter into Life.
語り手が草薙から別の人物へ。
えええ、草薙どうしちゃったの!?とびびったが、
今度の語り手は草薙の部下、クリタ。
草薙は大尉にまで出世しちゃったらしい。

草薙と同じようにキルドレのクリタだが、当然ながらその視点は
草薙とまるきり同様ではない。
また、これまで(当然ながら)描かれなかった、
他者から見た草薙の描写があるのも新鮮。

そこで断片的に明らかになる、キルドレという存在の特異性、突発性。
老化して死ぬことがないキルドレの多くが、何故死に直結するような
職を望むのか。
ティーチャの子を妊娠したことは、草薙の体に何を残したのか。

このシリーズ、今年の夏に出る第5作で完結らしい。そら楽しみだ。
ところで草薙水素って、草薙素子とは関係あるのかな(笑。

★★★
20061229借
小説 作家 森博嗣 / comments(0) / trackbacks(0)
森博嗣『ダウン・ツ・ヘヴン』
森博嗣『ダウン・ツ・ヘヴン』中央公論新社、2005(新書版)、
340p、1000-



『スカイ・クロラ』、『ナ・バ・テア』に続く、シリーズ第3作、
Down to Heaven.
ただのいち戦闘機乗りであり続けたい草薙の意志に反して、
かの女を失いたくないために、戦闘機に乗せたくない本社の意向。

どんなに滑稽に思える広告塔としての役割も、
場合によってはスカートも化粧も、
若手パイロットたちへのレクチュアも引き受けよう。
それが、飛び続けることへの対価であるならば。

そんな草薙に与えられた任務は、都市上空での空中戦。
敵機を操るのは、ボンネットに黒猫をマークしたあの男。
記憶を失ってかの女の前に現れる少年、函南は、
いつも草薙が見るのと同じ夢を見ている。
函南と草薙の関係は?


相変わらず、どことどこが戦っているのかわからない戦争。
しかし敵機は現れ、かれらは出撃し、いくつかは帰還しない。
しみじみと、この一人称の秀逸さを堪能する。
一人称のくせに、やたら周囲の説明をしたりする、
ただ主語が「I」なだけの作品とは一線を画す。
その、完全にエゴセントリックな視点は、たぶんキルドレとしての
かれらの視点と、うまく一致してるのだろう。

草薙はこれで、ちょっと昇進してしまうことになった。
続く、次号!

★★★
20061229借
小説 作家 森博嗣 / comments(0) / trackbacks(0)
森博嗣『スカイ・クロラ』
森博嗣『スカイ・クロラ』中央公論社、2001、304ページ

『ナ・バ・テア』の前作。
前作なのに(なので)おもしろいのは、この世界にわたしが慣れたからか、
ティーチャがいないからか(笑。
あ、時代的にはこっちの方が『ナ・バ・テア』より後なのか。
だよね、クサナギ死んじゃったもんね。

こうなったら『ダウンツ・ヘヴン』、『フリッタ・リンツ・ライフ』も
読まなくては。
英語読みの日本語表記的には『ナ・バ・テア』がいちばんうまいと思うけど(笑。

なんというか、森作品の主人公を初めとする登場人物の、身体感覚の薄さとか
文科系のものの考え方や文化の軽視(または無視?)のしかたには
だんだん食傷しつつあるんだけど、ちょっとくせになるといえば、なる。複雑。


★★★
20060917借。
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200701再読。
えーと、これは3作で登場する少年、函南が語り手。
函南は3作目のときの記憶を、またしても失っているんじゃ?

時間軸に載せると、
 ナ・バ・テア(草薙)栗田登場
 ダウン・ツ・ヘヴン(草薙)函南登場
 フラッタ・リンツ・ライフ(栗田)
 スカイ・クロラ(函南)作中では栗田が死んだことに

今夏刊行の5作目は、フラッタとスカイ・クロラの間に
位置する時間ではないかと勝手に推測。
スカイ・クロラ後、という可能性もあるけれど。
などと、めずらしくそういうことを考えて楽しんだり。
小説 作家 森博嗣 / comments(0) / trackbacks(0)
森博嗣『迷宮百年の睡魔』
森博嗣『迷宮百年の睡魔』2004、幻冬社、376ページ

『女王の百年密室』の続編。これもブータンに持参。
ロイディはますます渋くなってく(笑。
おかあさんよりはデボウ・スホの方が好きかな。
前作よりおもしろいです。

★★★
20060917借。
小説 作家 森博嗣 / comments(0) / trackbacks(0)
森博嗣『ZOKU』
森博嗣『ZOKU』光文社、2004、263ページ


旅行にはライトノベルを、ということで、森博嗣3冊まとめ借り。
これはブータンにまで持参。

ごめん、ストーリーを書くほどにも思い入れがない。
手を抜いた田中芳樹(てことは最近の田中芳樹?)みたいだった。
文体もキャラもびみょーなギャグも適当な風刺精神も。


20060917借。
小説 作家 森博嗣 / comments(0) / trackbacks(0)
森博嗣『ナ・バ・テア』
森博嗣『ナ・バ・テア』中央公論新社、2004、338p

極私的森博嗣の季節ふたたび。
タイトルが気になっていたので、普通に借りて中を開いたら
『スカイ・クロラ』の続編であったことを知る。
でもまあ、だいたいの内容は推察できるわな。

キルドレ(KILL CHILDREN?)と呼ばれる新人類の主人公。
戦闘機乗りとして「敵」と戦うが、それらがどういった経緯で
戦争をしているのか、全容はまったくわからない。
一人称で語られるのは、ひたすら空への憧れ、地への憎悪。
しかし、地に下りねば生きていけない自分への絶望。
他者との関係の重さ、しかし関わらねば生きていけない現実。

ちょっと痛い系?(笑
高校生くらいならべろべろにはまったかな。
でもちゃんとおもしろかった。
これは『スカイ・クロラ』も必読ですな。

None But Air「空(空気)以外、何もない」を
「ナ・バ・テア」と読ませるセンスが森博嗣的に秀逸。
★★★★
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200701再読。
3、4作めを読んでから読み直すと、また格別。
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