活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
島本理生『シルエット』
島本理生『シルエット』講談社、2001.10、159p、1300-

シルエット
植物たちの呼吸
ヨル


2年前、父親に刺されて以来しゃべることを放棄し、
寝たきりになった母親とふたり暮らしの冠くん。
彼の、霧雨をまとったような空気に、わたしはすっかりおおわれた。
わたしたちの雨は降り止まないようだった。
幼い頃、母が家出と浮気を繰り返していたことから、
女性の体に触れることを極端にいやがる冠くんと、
だからわたしは手をつないだことさえない。
8月3日の、別れ話のときまでは。
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そんなやつさっさと胸の小箱にしまって次行こ次!(笑
といえるのは、きっとわたしがすっかりおとなに
なってしまったからなんだろう。
冠くんとの別れというより、冠くんに本質的には受け入れられて
いなかった、という認識のほうが、長く深く痛く、かの女を
苦しめる。
しかし何をしていても、優しい新しい恋人と一緒にいても、
ふとしたはずみでその苦しみは、何度でも顔を出して、
かの女の心を止めるのだ。

冷静で客観的であろうとしつつ、どうしようもなくそうなれない、
でもそこはジレンマとしては意識されない思春期。
どんな変化があったのだとしても、冠くんははじめに、
あんなことをいわないほうがよかったんじゃないだろうか。
去り行く者はいくらでも感傷を置き去りにすることができるが、
残る者の気持ちはおそらく永遠に、向こうには伝わらないのだから。

★★★
20090305借
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