活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
杉浦日向子『合葬』
杉浦日向子『合葬』、ちくま文庫、197p、560-
初版1987.12、18刷2007.6、初出1983.5(青林堂)
解説:小沢信男


慶応4年4月11日、江戸城開城。
将軍慶喜は水戸へ戻り、
官軍の占領下に入った江戸府内。
養家を放逐された笠井柾之助、
長崎に遊学中、所用で実家に戻った福原悌二郎、
束髪で福原の妹との縁組みを断りに来た秋津極、
3人は12日に品川で再会する。
竹馬の友で、いずれもまだ前髪の少年だ。
秋津は彰義隊に入り、上野の山に立てこもっている。
幕府と心中するつもりなので、髷を切り、
縁組みを破談にしたというのだ。
行く当てのない笠井も秋津とともに上野に向かう。
しかし頭脳明晰の福原が見る限り、今のままの
彰義隊に未来はなく、強硬派が穏健派を退け、
新政府との戦を始めるのも遠い日ではないと思われた。
妹に頼まれ、秋津への面会のために
福原が上野を訪れた5月14日、官軍は突如上野を包囲した。
下山が叶わなくなった福原を含め、立てこもるのは約1000名。
15日朝、戦端は開かれた。
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胸が痛くなるよな話だなあ。
思春期の情熱を、理屈抜きで大義にぶつける少年たち。
必要なのは血潮がたぎるような時間と舞台。
そこまで燃えずに、ただなりゆきで参加する者、
冷静に対極を判断する者、
結局は大人たちの都合で翻弄され、あたら若い命を散らす。
何かにとてもかぶるような構図でもあり、
どこででもいつでも起こっているようなことでもある気もする。

線が細い初期の絵が、少年たちのはかなさを
強調するようでかなしい。
細かいところまで抜かりがないのは愛だなあ。
解説もよい。

同時収録の「長崎より」は、福原が遊学先から妹に宛てた
手紙の体裁。朋輩はみな散切り頭、街を歩けば異人、
解剖実習がある病院への行き帰りにのぞく西洋雑貨の店。
同じ時期の江戸とは似つかぬ空気。
「四月には江戸へ行きます。/三、四日は滞在できそうです。
 砂世には一寸した/土産の用意があることを
 付け加えておきます。
 その日を楽しみに/今日は残念ながら/是でお別れ。」(188p)
で結ばれる手紙。しかしその4月に起こることを、
この本を読んできた者は知っている。
滞在が3、4日ですまぬことを、福原が再び長崎へ戻る日のないことを。
春になったので夜着を質に入れて本を買おうという友人、
イギリス製の裁縫箱は、上野の戦とはあまりに遠い。

2008.5.8購入
★★★★
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