活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
倉橋由美子『ポポイ』
倉橋由美子『ポポイ』福武書店、1987.10、
166p、1000-


前世紀の末に首相だった祖父の元へ、ふたり組の
「今世紀最初の純正テロリスト」が乱入し、
密談ののち若いほうが切腹し、年長の男がそれを介錯し、
その刀で自刃したという事件が起きたのは数日前のことだ。
しかもその直後、祖父は脳梗塞で倒れ、今も意識が戻らない。
私、来栖舞は、その落ちた首が装置につながれ、存命していることを
婚約者の佐伯さんから知らされる。
しかもその生首を預かってほしいというお願いつきで、だ。
運ばれてきた首は、古代ローマ風の美青年だった。
舞は首に「ポポイ」と名をつける。ギリシア語の悲嘆を表す感嘆詞。
ポポイから、あの日起こったこと、その意図や背景を聞き出すことが、
舞に漠然と期待された。そして、舞とポポイの、同居生活が始まる。
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初読は高校生のとき。ついにAmazonで購入(だって絶版なんだもん)。
といいつつ、1年以上ここに書くのをさぼってたけど。。
倉橋の作品は全体に好きだけど、この『ポポイ』は頭抜けて破格に好き。
もはやこの理由は理屈じゃない気がするな(笑。
首との対話の内に、生と死、哲学、または美学が語られる。
多くは、美しい音楽をBGMにして。その気配。
1年に満たないその生活が終わるとき、舞が埋めるのは首だけでなく、
舞自身の少女期の終わりだ。

最近『シュンポシオン』を読んだばかりだったので、人物相関関係も
しっくりきた。倉橋の「さん」づけの人物の描写はよいね。

ネタバレもいいとこだけど、いちばん好きな箇所を抜き書き。

予定してあつた無花果の木の下の軟らかい土をシャベルで掘つて首を埋める。最
後に見た時、首はまだ目を開けてゐた。私はヨハネの首に接吻したサロメほど悪
趣味ではない。首が湿つた土の中で気持ちよく眠り、冬を越して、来年の春に芽を吹
いて、綺麗な花を咲かせてくれれば素晴らしいだらうに、と首のために願ふにとど
めよう。秋の気配を運ぶ冷たい朝の風が吹いて、目にしみたかと思ふと、どこかの
栓が緩んだかのやうに涙が出た。犬のグルダが哲学者風の皺を寄せて近づいて
きた。ここを掘り返してはいけませんよ、とよく言ひ聞かせておかう。そしてポポ
イの墓を立ててやらなくては、と思ふ。ポポイの墓。戒名はタナトス。享年零歳。
(165.9-166.3)

★★★★
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