活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
三砂ちづる『オニババ化する女たち』
三砂ちづる『オニババ化する女たち 女性の身体性を取り戻す』
光文社新書、20040920、253p、720-

はじめに オニババ化とは何か
第1章   身体の知恵はどこへいってしまったのか
第2章   月経を「やり過ごして」よいのか
第3章   出産によって取り戻す身体性
第4章   女性はなぜオニババになるのか
第5章   世代をつなぐ楽しみを生きる
おわりに


日本の昔話に出てくるオニババが、「社会のなかで適切な役割を
与えられない独身の更年期女性が、山に籠もるしかなくなり、
オニババとなり、ときおり「エネルギー」の行き場を求めて、
若い男を襲うしかない、という話だった」(3.6-8)という
衝撃の解釈から始まる、身体論。
上記の「独身」は「処女」または「コンスタントにセックスできる
パートナがいない」と置き換えても可。

女性という肉体を抱えて生きていく上で、その身体性を軽視していく
ことへの警鐘、しかしそういった身体の軽視ということによって
現在の「近代社会」がある程度のかたちをなしたこともまぎれもないこと。
女性は結婚して、家庭に入って出産して育てて、という「レール」を
自明のものとしない生き方を、先人が切り開いたことによる恩恵も当然ある。
そういったことを踏まえた上で、自分が抱える女性という肉体を、
自分のものとして考え直してみることも必要なのでは?
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身体論の行き着く先として究極だろうな、妊娠と出産。
ただの経験論に陥らない、そして自分の主張とは異なる立場を
受け入れつつの論の展開は、さすが理系、という感じ。
後半はちょっと、世話焼きなおばさんの押しつけみたいに
感じる部分がなくはないけど。。
赤松啓介を紹介するとき、「柳田國男が、おそらく意識的に
取りこぼしてきた、性に関する民俗を、長年の地道な調査によって
研究したといわれる民俗学者でした。」(36.14-37.1)の
「といわれる」に、しびれる(笑。
サンカという人々を引いてはいるけれども、その存在に学術的に
疑問が持たれている、ということも併せて書くし、
そういうとこの公平性って大事よね。
でもまあ正直、赤松の成果や、サンカとかいう語句を、日本という国
全体にとっての「昔」≒過去として引用しないでほしいなあ。
誤解を招くよ。そういうことを差し引いてもおもしろい本だと思うけど。

ただ、「恋愛弱者」「モテない」というカテゴリに入ってしまう
人たちにとっては、読むもつらいものになってしまうのかも。
もちろん著者がいちばん心配しているのはそのカテゴリの人々なのだけれど、
その人たちが著者のメッセージを受け取る(まで本書を読み込む)のは、
ちょっと難しいかも、と思う。
出産しないことを選択した人にとっても、
なかなか受け入れがたく思われるかもしれないし。
上記の昔話解釈でいきなり引く人もいそうだし。
とりあえず、読者である自分自身を置いておいて、ニュートラルな立場で
読んでみると、とてもおもしろい本であることは間違いないのだけれど。

そういえば、出版当時話題になっているのを見た記憶が
あるようなないような。
Amazonにおける評価の低さにとりあえずびっくり。
やっぱりタイトルの問題があるんじゃないかな、もったいない。
それと、いくら新書といえど、「〜と思う」が多いのでは。。
もう少し客観的なデータを出して主張すれば、
もう少しまろやかに受け入れられるのではないかという感じもする。
ので、この人のちゃんとした専門の論文を読みたい。
というわけで、NDL-OPACにて検索。10数冊著書があるけど、中でも↓

・『疫学への招待 : 周産期を例として』医学書院、2005.5

・『コミットメントの力 : 人と人がかかわるとき』
 NTT出版、2007.9

・『性/愛』岩波応用倫理学講義 ; 5、岩波書店、2004.11

・三砂ちづる,津田塾大学「女性の身体性の知恵に根ざした
 ウィメンズヘルスのモデルの確立」
 文部科学省科学研究費補助金研究成果報告書 基盤研究(C)
 2006.5

↑特に岩波の叢書と、科研費報告書は読んでみたいな。
だんだんこうやって、セクシュアリティとか女性学の分野に
深入りしていくんだろうなあ、自分。

あと、子どもの頃に、性のことなんてこの世にないような顔して、
いやらしいことだと忌避して、異性とつきあうなんて早いとか
なんとか、っていわれ続けてきたのに、年頃になった途端、
当然肉体関係を含むことになる結婚、ということを
親が勧め始めることへの違和感とかを、持ったことがある人には
とてもお勧め。

20080125購入
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