活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
久世光彦『燃える頬』
久世光彦『燃える頬』文藝春秋、2000、212p、1857-

そのとき、ぼくは15歳で、母と姉を東京に残して、
父とふたりでその日本海側の町に疎開していた。
高級古書店を営んでいた父が一緒に疎開させた山ほどの本に
囲まれ、父と作った森の小屋に、ぼくたちは住んでいた。
ひたひたと迫る戦争の影と、どうやら抗えない運命。
3人の仲間とこっそり珈琲を飲む《狼屋》、
廃墟となった元映画館《鳳座》、森とそこにある《小袖の滝》が
ぼくたちの遊び場だった。
森の中の湿地、通称《恋ヶ窪》の洋館にあの人が越してきたのは
その年の春。

15歳だった春から夏への短い時間を、ぼくは決して忘れないだろう。
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設定だけでだいたい何が起こるかわかるような話だけど(笑)、
息苦しいその15歳の時間の描写は秀逸。
美しすぎると言ってもいいほど。
白秋の「紺屋のおろく」の引用もよい。

夏夫、ほんとうの光って、二つしかないのよ。
一つは、深く、深く、目を閉じたとき、
永劫の彼方から射してくる鬱金色の光。
夏夫、もう一つは? ??ぼくは頷いて答える。
??それは、夏の朝、山枇杷や黄楊の葉に宿った露の珠に
戯れかかる、森の光です。(208p)

20071003借
★★★
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