活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
皆川博子『少女外道』
皆川博子『少女外道』文藝春秋、2010.5、230p、1857-

少女外道
巻鶴トサカの一週間
隠り沼(こもりぬ)の
有翼日輪
標本箱
アンティゴネ
祝祭


父の自慢の庭に季節ごとに訪れる庭師。庭師の息子、葉次は、特にうれしそうでもなく、久緒の面倒を見てくれたものだった。日焼けする肌に流れる血に、一瞬の官能を覚えた少女の後ろめたさ。少女外道
母の叔母の火葬の立ち会った日。裕樹は、高校時代から焦がれていた画家、笹尾苓が血縁であることを知った。一族から逸脱し、実母にも実姉たちとも折り合いの悪い苓。その作風に底流する希死念慮に、若いうちから心惹かれていたことを、本人に会って裕樹は自覚する。巻鶴トサカの一週間
鳰子と義姉、乙矢の奇妙な友情。夫である長兄とうまくはいっていないらしい乙矢だが、自分に甲矢という生まれない双子がいたことを、次兄と鳰子には明かしていた。隠り沼の
連帯と破壊を叫ぶ群集渦巻く大学から離れ、異国の地でフレスコ画に熱中する同胞に出会う。画家が一心に描いているのは有翼日輪。画題を指定されていないときにはいつも、と画家は話した。自分は9歳の時に死んでいるので、と。
東京の女専に合格し、単身上京したおり、実家では死んだと伝えられていた叔母を精神病院に訪ねた。駆け落ちをして心中で生き残り、心を病んだのだという。実家に残された叔母の部屋から持ち出したのは標本箱。夢見心地の叔母は、恋人と思われる男性から贈られたものであるらしい標本箱の中身を全て諳んじた。そして今思い出す。最後の弁に残されていたのは、透明な骨であったことを。
父が養蚕農家である実家を継いだので、小学3年のとき、梓は東京を離れた。県立高女の4年になったとき、江美子が疎開してきた。発表会で着るはずだったという白いチュチュを持って。都会育ちのよしみで、ふたりは仲よくなっていく。アンティゴネ
両親の死後、網元をしている遠い血縁の家にしばらく預けられていた。物書きとして生計を立てられるようになるにつれ、睡眠が沙子から奪われていった。夜間の放浪の末、思い立ってこの海辺にたどり着いた。祝祭
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渦巻く少女感覚。端から見ると不自由のなさそうな生活のうちに潜む自死への羨望。年を重ねても薄れぬそれ。または蘇るそれ、気づくそれ。に、ついに身を投じるものと、抱えたまま生きていくものと。
正直、古いんだよ!という感じもする。くどいよ、と。そこまで生き延びたのなら、もう全うしていいんだよ、と言ってしまいたい。いい年した人間の希死念慮ほど、傍から見て滑稽で、苛立つものはないのだから。
しかしながら執拗に繰り返されるその願望に、思わず自分の輪郭が揺れる瞬間を感じることもある。そのことが少し、うしろめたい。

20101024借★★★
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