活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
片田珠美『無差別殺人の精神分析』
片田珠美『無差別殺人の精神分析』新潮社、2009.5、
223p、1100-

はじめに
第一章 秋葉原無差別殺傷事件
第二章 社会全体に対する復讐
    1.池袋通り魔殺人事件
    2.下関通り魔殺人事件
第三章 特定の集団に対する復讐
    1.大阪教育大池田小事件
    2.コロンバイン高校銃乱射事件
    3.ヴァージニア工科大銃乱射事件
第四章 無差別大量殺人は防げるか?
第五章 殺戮者を生み出さないために
    ―何が抑止力になりうるのか?
あとがき
参考文献一覧


無差別大量殺人(mass murder)を、「単発の事件として一つの場所で発生し、通常二四時間以内に終了する」(11.2)としたディエッツの定義を採用し、事例研究から、なぜ無差別大量殺人が起こるのかを考察、その抑止力が何か、ということを検討しようと試みている。

取り上げている事例における加害者の傾向を、素因、促進要因、容易にする要因、病(被害妄想、拡大自殺、性愛)という項目から考察する。
ここからあぶり出される加害者の傾向は驚くほど似通っており、確かに、無差別大量殺人へと向かう人間のタイプというのは、ある程度定義しうるのではないかと思わされてしまう。

そこで著者の慎重なところは、ひとつの要素が共通するからといってその要素を有している人間の全てが無差別殺人を起こすわけではない、ということを、なんども繰り返し、逆にいえば、
「ではなぜ殺人を起こした人物は、その一線を超えてしまったのか」という部分を、丁寧に洗い出している点にある。


フロイト派の精神分析医としての姿勢を貫くこれらの解釈はある意味ものすごく感動。(というか、フロイト派のお医者さんは、いまでも去勢不安とかの作業用語を分析に使うのか?)

そこからいくと、かれらが無差別大量殺人に至った理由は、かれらが男性として生まれてしまったことに起因すると分析されてしまう。(FBIの分析によると、大量殺人犯は、ひとりだけを殺害する殺人犯と比較して、男性である場合が優位に高い、187.3-9)

その分析結果からは、いかな社会的背景があったとしても、今後も無差別大量殺人はなくならないだろう、という絶望的な結論が導き出される。
この結論に至る過程にいまいち納得がいかないわりには、結論自体は的はずれなものではないのだろう、という不吉な直感が、さらに結論を絶望的に見せるのだ。


これじたいは、ひとつのセオリーと手法に拠った事例分析として評価できると思うのだが(絶望的な結論だとしても)、「わが子を殺戮者にしないためにやってはいけない十か条」(211-)は、ひどすぎると思う。
ないほうがいいと思う。
二重否定なのもどうかと思う。


20100702借
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