活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
佐藤哲也『下りの船』
佐藤哲也『下りの船』早川書房、2009.7、225p、1600-

風景/家族/群衆/時間/移民/旅程/雨音/指輪/仕事/
吐息/孤児/船旅/都市/記事/文明/小鳥/少年/湿原/
交易/旅人/歴史/季節/沈黙/泥流/脱出/党派/抵抗/
収穫/死者/生者/兵士/午後/砲艦/戦場/遭遇/伝説/
肖像/風景


麦が細々ととれる、風の強い村の、
ある老夫婦の家の前に捨てられた赤ん坊は、
老夫婦によって大切に育てられ、よく働く少年になった。
移動教室の教師は、この世界が膨大に広いことを語るが、
その実感は少年たちにはなかった。
ある日、銃を持った兵士たちが村を取り囲み、
移住を強制させられるまでは。

歩きつくした先の痩せた土地で、難民のようにテントを張って
少年たちは3年生き延びる。
そしてある日名前が呼ばれ、老夫婦ともども「船」に乗せられる。
行き先も知らされぬまま、3日分の食料のみを持たされて。
「船」は、黒い、巨大な四角錐。
このことばを少年は知らなかったが、それはピラミッドによく似ていた。
「船」は、16光年離れた惑星に移民を送り込む、
超光速宇宙船だったのだ。
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さすが『イラハイ』!
まるで歴史そのものが語り手であるかのように、
淡々と年表を繰るように、鳥瞰するカメラからの映像のように、
感情のない地の文で、物語は進んでいく。
ときおり、そこに生きる人間にふっ、とフォーカスして、
また遠ざかる。
送り込まれた少年も、そのフォーカスされる人間のひとりだ。

膨大に移民を送り込み、鉱物資源を大量に送らせていても、
移民星を整備しようなどという気はさらさらなさ気な「地球」。
まったく機能していない社会組織。横行する横領。
システムの一部としてある反政府組織。融合する伝説。

かなり切なくなるやりきれない結末(ある意味では)を
迎えるのだけれども、それでもこの星の生活は続いていく。

なんだか、とんでもないものを読んでしまった、という感。
『イラハイ』といい、『妻の帝国』といい、作者のテーマは
歴史や国家なのでは?という気がしてくる。
そしてその中に生きる人間なのでは?と。

★★★
20090731借
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