活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
田近英一『凍った地球』
田近英一『凍った地球 スノーボールアースと生命進化の物語』
新潮社、2009.1、195p、1100-

まえがき
プロローグ
第一章 寒暖を繰り返す地球
 1 南アフリカの大地に証拠が
 2 氷河時代にいる私たち
 3 赤道まで凍っていた
第二章 地球の気候はこう決まる
 1 環境を決める三つの要素
 2 一気に凍り、一気に融ける
 3 太陽は少しずつ明るくなっている
 4 地球環境はなぜ安定しているのか
 5 プレートテクトニクスの役割
第三章 仮説
 1 気づかれなかった論文
 2 四つの謎がひとつの仮説で解けた
 3 零下五〇度から摂氏五〇度まで
第四章 論争
 1 激しいやりとり
 2 地球は横倒しになっていた?
 3 生物はどうやって生き延びたのか
 4 ソフトかハードか
 5 答えは南極大陸に
 6 なぜ全球凍結したのか
第五章 二二億年前にも凍結した
 1 地球と生物の共進化
 2 なぜ酸素濃度は急激に上がったのか
 3 カナダ・ヒューロン湖にある地層
第六章 地球環境と生物
 1 絶滅と進化の繰り返し
 2 真核生物の誕生
 3 生物進化に与えた影響
第七章 地球以外に生命はいるのか?
 1 地球のような惑星
 2 金星や火星にも海があった
 3 存在するスノーボールプラネット
エピローグ




1960年代後半に一度発表され、その媒体が周知されにくいものであったことも災いし、1998年「サイエンス」誌にその論文が掲載されるまで、惑星学者にもほとんど知られていない説であった「スノーボールアース(地球全凍結)仮説」。

本書は、地球がいかにして現在の状態を保っているのか、どのような過程を経てここに至ったのか、明晰に、しかも100%ひとつの学説に寄ることなく説明していく。

著者は、地球全凍結などなかった、という仮説のもとに大きな論文を物した直後に優れたスノーボールアース仮説に出会い、もともとの自説と、全く逆の仮説であったにもかかわらず、ちょー目ウロコでその是非を問うていく。
この姿勢と過程は、学問の進歩のために自説に固執しない、高く評価されるべきものだと思う。

スノーボールアース仮説は現在では、多くの反駁と反証、議論の深化や手法の洗練によりこれはひとつの作業仮説として、地球物理学、宇宙物理学など、惑星システム科学の分野に敷衍している。
著者は、惑星環境変遷史の一環としてこれをとらえ、現在の地球環境への理解の深化と、今後の変動の予測などを含めた、幅広い研究の一端となることを確信しつつ、研究に邁進しているわけだ。

全凍結、無凍結のプロセスを説明する箇所では、その物理的な内容に一瞬やる気を失ってしまうかもしれないがw、誠実でリズムのある文章なので、地の文を追うだけで大丈夫。
あまり知られていない学問領域のもたらす知的興奮、
協業的に問題に立ち向かう研究者たちの情熱、
大反発する研究者たちの桎梏、
著者本人の熱意や、
東大大学院地球惑星科学専攻のアグレッシブな姿勢など、
読むべき価値のある1冊。
目次がちょっとわかりにくいのが惜しいかな。

内容の詳細はこちらの書評でw
今週の本棚:中村桂子・評
東大理学部のプレスリリースもついでに。
約22億年前の全球凍結イベントは大気・生命進化の起爆剤?

しかしいいなあ、新潮選書。
池田清彦『分類という思想』も読んでみよう。

20100702借
学術書みたいの 物理科学 / comments(0) / trackbacks(0)