活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
伊藤智義『スーパーコンピューターを20万円で創る』
伊藤智義『スーパーコンピューターを20万円で創る』
集英社新書、2007、235p、680-

まえがき
第一章 理論天体物理学とコンピューター
第二章 コンピューターの天才
第三章 ハーフ・フル
第四章 年収千四百万円の大学院生
第五章 宇宙のコンピューター
第六章 GRAPEプロジェクトの青春期
第七章 宇宙から生命科学へ
第八章 世界最速のコンピューターシミュレーション
あとがき


1989年秋、240メガフロップスの性能を持つ
スーパーコンピューターが開発された。
「Gravity Pipe(重力パイプライン)」から取った
「GRAPE−1」という名称のこのコンピューターは、
重力の計算が主体となる天文学のために作られた
専用計算機。
特筆すべきはその開発費と、開発者。
開発費は20万円。
スーパーコンピューターの導入には実質10億を
越える投資が必要だった時期の話である。
開発者はコンピューターを専門としない素人チーム。
しかも直接の開発者は、コンピューターのことなど
ほとんど何も知らなかった一介の学生。

これは、「必要なものが存在しないなら、自分で作るしかない」と
みずからの理論を証明するための計算をおこなう計算機を、
自力でなんとかしようと思っちゃったアグレッシブな理論天文学者と、
自分の能力をものすごく信じて、その開発に邁進していった
アグレッシブな助手や学生たちによる、ちょっとしたロマンの物語。
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まあ、それでちゃんと結果が出るところがすごいんだけどね(笑。
著者は『栄光なき天才たち』の原作者でもあるせいか、
フランクな文章で、読ませる。新書に適した文体だ(笑。
七章以降の、プロジェクトのその後、の書き方は、
そういうヒューマニズム系開発録にありがちな、ムダにドライな感じ。
そうそう、「プロジェクトX」にそっくりなんだ。
途中から田口トモロフの声で読んでた(笑。

ものすごく変態な人たちばかり出てきて、おもしろかったです。
でもこれ、タイトルよくないと思う。
内容を正しく表していないよ。
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根上生也『計算しない数学』
根上生也『計算しない数学』見えない“答え”が見えてくる!
青春出版社、2007.3、216p、730-

Chap1 計算ばかりが数学じゃない!
Chap2 見てそれとわかる数学
Chap3 本当は、数学が好きなんじゃない?
Chap4 数学嫌いは勘違いでした!
Chap5 百年後の数学を目指して


「数学探偵セイヤ」と、伝聞(笑)でしか著者を知らなかったが、
高校1年生から「数学が苦手だと感じるけど、理系に進むことはできるか」と
問われ、タイトルだけでこの本を推挙した以上、
自分も読まねばなるまいと購入。新書なので電車の中ですいすい読めます。

現行の「学校数学」の状況と、それ故に生じる「数学嫌い」の多さに対する
憤りが基本、なのかな。
数学をやる上で重要なのは計算そのものではなく数学的思考。
本書ではそれを「基礎数学力」と名づけ、学校数学ではそこを伸ばすことが
できない、むしろ萎縮させてしまうことを強調。
そして「基礎数学力」の発揮法を、おもしろい実例を挙げて説明。
さらに離散数学が、これから100年の数学界を支えるという自説を披露。
多少自賛がちなのが、まあ鼻につくといえばいえるのかもしれないが、
研究者というのは(天才というのは?)そんなものだろ。

この本を手に取る読者の多くは、たぶん数学から落ちこぼれた(笑)おとなで
ご多分に漏れず自分も数1で数学から脱落したのだけれど、
そういった読者の興味を引きつける題材から、数学の学史を経由して
これから先の数学までを展望してみせる、そしてそれを一気に読ませる
手腕は秀逸。中学生から高校生が読むべきと思うな(笑。
そうか、この著者、四次元が見えるだけじゃなかったのね(笑。ほめすぎかしら。

青春新書インテリジェンスは、なんかしょーむないタイトルも少なくないけど
たまにこういう掘り出し物的におもしろい本がある印象。
20071204購入。
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Michael Suk-Young Chwe『儀式は何の役に立つか』
※備忘録ですので、あまり真剣に読まないで下さい


Michael Suk-Young Chwe、安田雪訳
『儀式は何の役に立つか ゲーム理論のレッスン』Rational Ritual
新曜社、2003、147ページ、2200円

1 はじめに
  この本は何の役に立つか/議論/協調問題
  共通知識/議論の由来
2 理論を応用する
  式典と権威/儀式はいかにはたらくか/
  内側に向き合うサークル/『波止場』/
  大宣伝は効果がある/公共化の価格/
  強い紐帯と弱い紐帯/一望監視刑務所の礼拝堂
3 理論を磨く
  競合する説明/共通知識は不可能な理想?/
  意味と共通知識/共通知識の競い合い/共通知識と歴史/
  共通知識と集団アイデンティティ
4 おわりに

付録 ダイアグラムで議論を表現する
   協調問題をモデル化する
   メタ知識をモデル化する
   なぜ共通知識は協調問題を解決するのに役立つのか


・「『人々がその事実を知っている』ということを皆が知っている」
 ことが重要(i、6)
・協調問題:他の人々が同じように参加する限りにおいて
      自分も集団の行動に参加したいと思う(1.3-4)
・共通意識:他の人々の知識についての知識(2.3-4)
・公共的な式典は、社会的統合と既存の権威体型を
 維持するのに役立つ(2.9)
・公共的儀式は、単に情報の中心から個別の聴衆への
 メッセージの伝達ではない。
 …同時に、聴衆に他の聴衆が何を知っているかを知らせる
 (2.13-14)
・儀式における反復:メッセージがよく行き渡るように
          聴衆自身もそのパターンと反復を認識
 (3.5-7)
・ジェレミー・ベンサム「一望監視」刑務所の儀式的構造:
 他の囚人も同様の監視下におかれていることが各囚人にわかり
 共通知識を生み出す(5.11-13)
・共通知識の生成が現実の資源になりうる(7.11)
・「想像の共同体」:共通知識はコミュニケーションによって
          生成されるだけではなく、歴史的な
          前例によっても生成される(7.13-17)
・本書が明らかにしようとすること
 1 共通知識という概念が幅広い説明力をもつ
 2 公共的儀式が「行う」ことの本質的な要素は、
   共通知識の生成である
 3 合理性と文化のあいだの古典的な二分法は
   疑問視されなければならない(8.2-5)
         
         
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