活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
岡崎裕美子『発芽』
岡崎裕美子『発芽』、ながらみ書房、2005.10、
157p、2500-


羽根なんか生えてないのに吾を撫で「広げてごらん」とやさしげに言う(10)
あんなにも輝いていたホタルイカためらうことなく醤油にひたす(11)
蜜よりももっとどろどろとした時間確かめもせず君を味わう(12)
したあとの朝日はだるい 自転車に撤去予告の赤紙は揺れ(16)
二時間で脱がされるのに着てしまうワンピースかな電車が青い(19)
いずれ産む私のからだ今のうちいろんなかたちの針刺しておく(20)
振り向けばみんな叶ってきたような うす桃色に焼き上がる鮭(28)
はい、あたし生まれ変わったら君になりたいくらいに君が好きです。(39)
おしまいの電車に乗って会いに行く階段の吐瀉ひらりと越えて(54)
通夜のあと告別式の時間まで転がって読む岡崎京子(59)
その人を愛しているのか問われぬようごくごくごく水、水ばかり飲む(63)
少女ゆえ恥じらうというセオリーを壊したくって目をあけていた(69)
子どもが子を産みっぱなしで忙しい田舎 列車に乗り遅れたり(80)
泣きそうなわたくしのためベッドではいつもあなたが海のまねする(96)
目立たないところに鋏を入れながら共犯者として切る君の髪(122)
やわらかい部分に指を入れやれば鋭く匂い立つ早熟(わせ)みかん(134)
少しだけニガヨモギの匂いしたような あの町通るバスの窓から(137)
動物の赤ん坊なら簡単に 甥といういきものを抱く(147)
ぐらぐらの頭を抱けばわたくしに守りたきものありて/なきこと(148)
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入手に時間がかかってしまって、今ごろ読了。
林あまり以来の、女流歌人の性愛描写、であるようで、
それと並記される残酷な生の描写、それでいて稀薄な実在感。
そこはかとない空虚な、しかし通底する終末感。
比喩表現全開、ある意味文学少女炸裂?(笑

今、この人はどんな歌を詠んでいるのか、新しい歌集を待つ気持ち。

★★★ 2008.3落手
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