活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
榛野なな恵『Papa told me 〜わたしの好きな惑星〜』
榛野なな恵『Papa told me 〜わたしの好きな惑星〜』
集英社、2009.4、190p、419-


短編集。
買おうかどうしようか悩んだのだけれど、なんかイキオイで購入。

…。

これはさ、9巻とか11巻とかが最高潮だったよね、やっぱり(笑。
いい加減引き際を考えた方がよい。
知世ちゃんとおとーさんが出てくるだけの、
薄っぺらい短編を垂れ流すだけならば。

もともと、『Papa told me』における、
現実とおとぎの世界(と仮に呼んでおく)の境界が
混濁する、っていい方よくないかな、境界が曖昧なタイプの話は
そんなに得意ではなかったのだが、
ダルメシアンが異星人、とかって話(「エンジェルズ・アイ」)は
かなり受け容れ難い(笑。

以下、ちょっと前に別blogに書いた内容を再録。
-----------
去年でた『〜街を歩けば』も買っていないのだが。
だってそれまでとサイズが違うじゃんねえ(笑。

これは高校生のときから地道に集めていたシリーズなので
愛着はあるが、20巻過ぎてから、
知世ちゃんがやたら化け物じみてきた気がして
以前ほど熱心に読まなくなった。
知世ちゃんが永遠に小学生のままだとしたら、
わたしにとってはあまり興味のない話。

小学生であるゆえに、やりたいこととできることのギャップに
悩み、自分を取り囲む世界や社会を、
憧れやときには恐れや違和感を持って見上げ、
自分を愛してくれる父を大切に思いながら、
いつかその庇護の下から離れることを予感する、
現在進行形の成長物語だったのにな。

永遠の輪の中で仙人みたく落ち着いてしまった知世ちゃんが、
疲れた悩める大人たちを癒していく、みたいなパタンは、
たまにあったからよかったのであって、
それをメインに据えられると
ちょっと…ねえ。
-----------
それから、最近の『Papa told me』に対するわたしの違和感の一因は
おとーさんの知世に対する愛情のほうが、
その逆よりも多めに見えるからかもしれない。
娘だから父に大切にされている、または亡き母の似姿としての
自分が、父の愛情を喚起しているのではないか、
自分がいなければ、父はもっと自由に生きていけるのではないか、
ということばに出さない知世の思いと、
おとーさんが気づき得る/気づき得ない、尽きせぬ愛情が、
この作品の底流であったと、勝手に思い込んでいるのだと思う。

それが単なるわたしの思い込みなのだとしても、
今のわたしがこの本を、対しておもしろいと感じないのもまた事実。
たぶん、この本はそう長くは手許に置かないと思う。

★★
2009.5購入。
コミック サ行 / comments(0) / trackbacks(0)
朔ユキ蔵『セルフ』第1巻
朔ユキ蔵『セルフ』第1巻、小学館、
2008.12、202p、514-


国木田陽一、24歳、図書館に勤めている。
普段の生活に大きな不満はない。
かの女の有加は、大切にしたいと思っている。
でも座右の銘は「人間はみんな性器のドレイ」。
人間には知恵も理性もあるのに、
気持ちよさを求めるために蛙のような愚かしい姿になる、
自分にももちろん肉体的快感はあるが、
相手の奥深さにはかなわない。
12歳の初体験から12年、実感し続けることがある。
俺は、かの女たちの性器のドレイだ。
-----------
今まで1回もオナニーをしたことがないという、たぶん
稀有な(笑)人物が、今まで入らずにいたその世界に
模索しつつ分け入っていく。

いまさら人には聞けず、詳細はネットで検索。
登り棒にぶら下がって股間をこすりつけてみたり、
プールの排水溝に吸い込まれてみようとしたり。
でも実際にかれにそれを可能にさせたのは、
同じ職場の気になる同僚の私服姿、というのがいい(笑。

生真面目そうな主人公が、無表情に淡々といろんなことを
するところがコミカル。そのコミカルさに笑ってしまって
「バカだな〜」と読むこともできる。
しかし、快楽を自らのものとし、自らの心と体だけでもって
より高みへ向かって精進する姿は、ある意味崇高ですらあり、
「俺の体は今、俺のものだ!!」(162)という叫び(心の)は
近代的肉体からの脱却、の嚆矢なのかもしれない(ほめすぎ?)
だって、この「俺」の性別を女性だと仮定したならば。

絵的には、なんかやっぱり朔ユキ蔵、背景が弱いと思う。
なんかときどき「おっ」と思う構図があったりもするんだけど、
コマ運びは全体に冗長だと感じる。
エロ出身だとしても、やっぱそこは書き込んでいこうよ!
と勝手に盛り上がるのでした。
-----------
★★★
2009.2購入
コミック サ行 / comments(0) / trackbacks(0)
杉浦日向子『ゑひもせず』
杉浦日向子『ゑひもせず』ちくま文庫、258p、540-
初版1990.7、第5刷2006.5、初出1983.8(双葉社)
解説:夏目房之助

袖もぎ様
ぼうずのざんげ
もず
通言室乃梅
ヤ・ク・ソ・ク
日々悠々
花景色狐巷談

駆け抜ける
吉良供養


短編集。
発表時期も媒体も違うのかな、いろんな話。
この人は間違いなく凡人じゃなかったねえ。
江戸風俗研究家とかってあやしい看板じゃなくって
漫画家のままでじゅうぶんよかったのに。
杉浦の描く江戸はあまりに享楽的で、
江戸時代の限られた時期の、限られた場所だけでの風俗を、
あまりに普遍化させすぎた、といって
学部時代の教官はときどき怒ってたけど、
まあ近世史やって人から見ればそうかもしれないよね。
けど時代物の地域性なんてほとんどないようなもんだし、
杉浦だけの功罪というわけでもないでしょう。

わりとどの短編もよいけど、
道楽な若旦那の更正と別離の「ヤ・ク・ソ・ク」、
今夜輿入れする大店のお嬢の最後の恋「袖もぎ様」が
特によかったな。
青年たちが学問所への行き帰りに通る大店の前。
その2階から手鏡越しに、ある若い武家を見初めるお嬢。
その部屋にはあふれんばかりの嫁入り道具。
恋した青年の片袖に木瓜の実を包み、長持に鍵をかけて
花嫁御寮は家を出る。
いいねえ。

2008.5.8購入
★★★
コミック サ行 / comments(0) / trackbacks(0)
杉浦日向子『合葬』
杉浦日向子『合葬』、ちくま文庫、197p、560-
初版1987.12、18刷2007.6、初出1983.5(青林堂)
解説:小沢信男


慶応4年4月11日、江戸城開城。
将軍慶喜は水戸へ戻り、
官軍の占領下に入った江戸府内。
養家を放逐された笠井柾之助、
長崎に遊学中、所用で実家に戻った福原悌二郎、
束髪で福原の妹との縁組みを断りに来た秋津極、
3人は12日に品川で再会する。
竹馬の友で、いずれもまだ前髪の少年だ。
秋津は彰義隊に入り、上野の山に立てこもっている。
幕府と心中するつもりなので、髷を切り、
縁組みを破談にしたというのだ。
行く当てのない笠井も秋津とともに上野に向かう。
しかし頭脳明晰の福原が見る限り、今のままの
彰義隊に未来はなく、強硬派が穏健派を退け、
新政府との戦を始めるのも遠い日ではないと思われた。
妹に頼まれ、秋津への面会のために
福原が上野を訪れた5月14日、官軍は突如上野を包囲した。
下山が叶わなくなった福原を含め、立てこもるのは約1000名。
15日朝、戦端は開かれた。
-----------
胸が痛くなるよな話だなあ。
思春期の情熱を、理屈抜きで大義にぶつける少年たち。
必要なのは血潮がたぎるような時間と舞台。
そこまで燃えずに、ただなりゆきで参加する者、
冷静に対極を判断する者、
結局は大人たちの都合で翻弄され、あたら若い命を散らす。
何かにとてもかぶるような構図でもあり、
どこででもいつでも起こっているようなことでもある気もする。

線が細い初期の絵が、少年たちのはかなさを
強調するようでかなしい。
細かいところまで抜かりがないのは愛だなあ。
解説もよい。

同時収録の「長崎より」は、福原が遊学先から妹に宛てた
手紙の体裁。朋輩はみな散切り頭、街を歩けば異人、
解剖実習がある病院への行き帰りにのぞく西洋雑貨の店。
同じ時期の江戸とは似つかぬ空気。
「四月には江戸へ行きます。/三、四日は滞在できそうです。
 砂世には一寸した/土産の用意があることを
 付け加えておきます。
 その日を楽しみに/今日は残念ながら/是でお別れ。」(188p)
で結ばれる手紙。しかしその4月に起こることを、
この本を読んできた者は知っている。
滞在が3、4日ですまぬことを、福原が再び長崎へ戻る日のないことを。
春になったので夜着を質に入れて本を買おうという友人、
イギリス製の裁縫箱は、上野の戦とはあまりに遠い。

2008.5.8購入
★★★★
コミック サ行 / comments(0) / trackbacks(0)
佐藤友生『妖怪のお医者さん』
佐藤友生『妖怪のお医者さん』講談社
1巻:2007.6初版、2008.2第4刷、199p、400-
2巻:2007.8初版、2008.2第4刷、199p、400-
3巻:2007.10初版、2008.2第3刷、191p、400-
4巻:2007.12初版、191p、400-
5巻:2008.2初版、191p、400-


転校生の護国寺黒郎は、ひとりごとや奇妙な行動が多い、
暗めのめがねくん。ちょっとえっち。
他の生徒からあからさまに避けられているさまを見て、
もといじめられっこの春日琴子はかれに言う、
「お友達になりませんか?」

実は琴子の祖父は、現代の陰陽師として憑きもの落としを
よくする有名人。琴子はちょっと見えてしまうたちな
だけだが、クラスメイトの「ご期待」に応えて
お祓いまがいのことをし続けていたのだ。
そのことから命の危険にさらされたとき、
琴子を救ったのは意外にも護国寺だった。
驚く琴子に護国寺は言う。
「ボクは・・妖怪のお医者さんです」
-----------
どこかで見たような話、どこかで見たような絵。
たまたま5巻まとめてあったので読んでみたけど、
つづきが出ても読まないだろうなあ。
「マガジン」では受けると思う。
そのうちアニメにもなると思う。

2008.4.17読了 
コミック サ行 / comments(0) / trackbacks(0)
桜場コハル『みなみけ』
桜場コハル『みなみけ』講談社、2007、190p、514-

高校生の長女ハルカ、中学生の次女カナ、小学生の三女チアキ、
の3人家族の南家。
の、どうにもオタオタな日常。
-----------
冬はいつ出てくるかね。
なんかもう、全然オタくて下手くそなんだけど、
そこはかとなくおもしろくて困ったね、みたいな。

★★★
コミック サ行 / comments(0) / trackbacks(0)
里中満智子『天上の虹』20巻
里中満智子『天上の虹』20巻、講談社、2007、190p、429-


天皇の位を退いた讃良(持統天皇)は、孫である文武と同権の
太上天皇として政務を続行する。
しかし長引く体調不良、歴史書編纂の難航、皇族のスキャンダル等が
かの女を苦しめ続ける。
そんな中、かつて謀反の罪で断罪した大津皇子の遺児が、復讐のために
身をやつして都に入っていた。
-----
長けりゃいいってもんじゃなかろう(笑。と第1印象。
小学5年でこれに出会ったわたしは、一気に古代史に引きずり込まれ、
結果としてこの道に至ってる気がする。
その大きなきっかけである本作が、なんというかこう…延々と、あまり
おもしろくもないまま続いているというのは悲しい。
持統天皇の物語なので、かの女の死まで続くのはまあ当然としても、
なんかこう、もっと続き方があるんじゃないの、と。
著しい失速の感が否めない。
結局、伝記まんがなのか群像劇なのかが不明瞭なのがよくないよなあ。
といいつつ、壬申の乱あたりまではすごくよかったんだけどー。

ところで、天智とか持統とかっていうのは諡なわけで、例えば「天智」や
「天武」っていうのは亡くなったときに漢風諡号として与えられた、のはわかる。
じゃあ、皇位を退いてから亡くなったもと天皇(つうか上皇というべきか)とか
法皇の、天皇名って、どの時点で付与されるのかな。
退位したとき? それともやっぱり死後?

もうひとつ全然本作に関係ないことを備忘。
小学1年のときに出会った、それこそわたしのバイブルであるところのコミック、
清原なつの『光の回廊』が、amazonで5000円で出てる。
でももとはコミック。310円とか390円とか。
バイブルを買うのに、この金額は高いのか安いのか。むむむ。悩。

★★
2007.2購入。
コミック サ行 / comments(0) / trackbacks(0)
惣領冬美『チェーザレ』
惣領冬美『チェーザレ 破壊の創造者』第1巻、第2巻
講談社、2006、各780円


日本におけるチェーザレ・ボルジア像の多くは、
塩野七生の『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』に
よるものなんじゃないだろうか。
チェーザレ伝の多くは、かれの父が法王となり、チェーザレが枢機卿と
なったあたりから始まる。その的確な状況判断能力、冷酷な政治行動。

この作品は、そういった既成の概念とは少し異なるチェーザレ像を
見せようとする。ピサの大学に通う16歳の初々しい少年、チェーザレ。
快活に笑い、愛馬にほほえみかける愛嬌、教授陣を論破する明晰な頭脳、
「万能の人」レオナルドとの出会い、ミケロットとの友情。

このチェーザレがいかにして「かの」チェーザレ・ボルジアとなって
ゆくのか。道のりは長い(笑。何しろまだ16歳だし。

物語の流れは、基本的にチェーザレ・ボルジアの伝記なので(笑、
そこと主要人物を押さえておけば、おおむねOK。
次巻が楽しみです。

惣領もそうだけど、逢坂みえことか吉野朔実とか松苗あけみとか、
往年(ってほど昔じゃないか)の少女漫画の実力派が
ここ数年、青年誌でいい作品書いてる。なんだろね、これは。
みんな出身が集英社、ってとこも関係あるかしら(笑。

★★★★
20061027漫画喫茶。
コミック サ行 / comments(0) / trackbacks(0)