活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
約束の場所へ:小山宙哉『宇宙兄弟』1巻〜12巻(以下続刊)
小山宙哉『宇宙兄弟』1巻〜12巻(講談社、2008.6〜)

本気で宇宙を目指してる漫画があるらしいよ。
と、こっそり噂は聞いていたものの、なかなか手が伸びずにいた『宇宙兄弟』。
顧客のニーズと上司の抑圧の狭間でぶちきれた中間管理職の友人が帰宅途中に大人買いし、3回連続して読了した後「これうちにあると仕事にならないから」と里子に出されてきた。持つべきものはお財布の大きいストレスフルな職に就く友人である。

『宇宙兄弟』。
まずカバー紙がかわいい。ぱっと見はシンプルな白なのだが、光を当てると星とラメが七色に輝く。
ロゴの文字も軽いレトロ感と、メカニカルに堅い感じが出ていてよい。
帯をしたままだと背表紙で巻数を確認できないのが難点。
しかしこの帯がいちいち悪くないので、はずすのももったいないという心境だ。

本気で宇宙を目指してる漫画
で、
…本気で宇宙だよ…
という衝撃をまず受ける。
的場健『まっすぐ天へ』(講談社、2004)なみの直接さだ。あっちはイブニング、こっちはモーニング。朝晩対決やいかに(違います)。

人類の月面長期滞在が可能になっている近未来。
主人公の3歳下の弟は宇宙飛行士で、まもなく日本人で初めて月面に到着する。
その弟の悪口を言った上司に頭突きし、自動車設計会社を冒頭でいきなりクビになるのが主人公、六太だ。

少年の頃は弟とともに宇宙大好き少年で、宇宙飛行士になる夢を互いに抱き、相模原はじめJAXAイベントに通いつめていた主人公。しかしいつの頃からか自分の気持ちにブレーキをかけ、工学部卒業の後は自動車設計会社に就職し、勤務を続けていたのだ。一方、弟の日々人は自分の中にある「絶対」を信じ、JAXAの選考をパスし、NASAでの訓練の末、宇宙飛行士となった上、月面着陸クルーの一員に選ばれたのだ。

兄としてのプライドと、弟を守る兄でありたいという自負、いちばん近いライバルとしての葛藤。
うにうにと自分に言い訳をして動かない六太に、日々人がひとつ作戦をしかける。母に頼んで、JAXAの宇宙飛行士選抜試験に願書を応募させたのだ。
日雇いのバイトから帰宅した六太に、書類選考通過の通知が渡される。その日から六太の物語が始まるのである。

取り戻していく物語
とはいえこの六太、少年時代はかなりアグレッシブで、さまざまなことにチャレンジしていく熱い性格だった。寝食を忘れて勉強し、仕事以外ではさびついていた頭脳を磨きなおしていく。体力作りのために毎日走りこみをする。六太にとって宇宙飛行士への道は、まさに取り戻していく過程なのだ。
その過程で、自分の、宇宙へ行きたかった思いを、六太は思い出していく。そして、何故かれが宇宙へ行きたいのか、宇宙へ行って何をしたいのか、を繰り返し思い起こさせてくれるのは、恩人である天文学者のシャロン博士だ。
シャロン博士の名を冠した小惑星「シャロン」。地球からは小さな点としか見えないこの小惑星。しかし、空気のゆらぎのない月面に望遠鏡を建てたら。そこから見える深宇宙では「シャロン」の姿が美しく観測できるだろう。月面に天体望遠鏡を建てる。それが六太とシャロンの約束だ。

六太が宇宙を目指す途上では、いくつもの夢とさまざまな約束が交差する。父の難病を治せる薬を作るためSSLに搭乗したい医師、民間からの有人飛行を目指しベンチャーを立ち上げる60代、兄弟揃って月面に立つ約束をするエリート宇宙飛行士、宇宙を目指し炭鉱の町から飛び立った少年たち。その群像劇も見応えのあるものだが、それをいちいち説明するのは野暮というものだろう。
叶わぬ夢があり、夢にならぬ夢があり、あるいは人に嘲笑される夢がある。しかし、心の奥底にある「約束」が、かれらをして、何度も夢に向かわしめるのだ。

ムッタの造形
この「本気で宇宙を目指す」物語を読者に引き寄せているのは、主人公六太のキャラクタである。
六太は、クビにはなったとはいえ、乗用車の設計で何度も賞をとっているような産業デザイナである(そういう人材を頭突き程度で手放す会社はあるのか? という疑問は実はあるのだが)。
まず、母が勝手に応募した履歴書で書類選考を通過するのがすごい。普通落ちるぞ? 落ちたら話が始まらないが。
また、「エアそろばん」、消化器男事件はじめ、六太の映像記憶力は尋常ではない。動画で保存できる直観像気質だ。暗算力もただならない。
「コロコロムッタ」も、コミカルに語られてはいるが、同時並行してさまざまな作業を同じクオリティで遂行できる能力は、そうあるものではない。
「人よりシャンプーがよく泡立」つ天パの髪。ひょろひょろの体。弟と比べると、あまりかっこいい感じではない風貌と、へたれでみみっちい性格にだまされるが、実は六太はたいへんな天才くんなのである。

それなのに、俺は宇宙を目指す! というかっこいいモノローグには、お風呂アヒルとの入浴シーン。
JAXAの壁にかかる歴代宇宙飛行士の写真の眺め、ここは俺のスペースだ! と意気込むモノローグにはにやけた顔。
いくらでも決められるシーンでついはずしてしまう、ムッタのキャラクタが物語を身近にしている。
そして「元」少年漫画のセオリーにはずれない熱さ。
ムッタしかたねえなあ、と苦笑しつつ、美人を見るとどんな美人にも「おっ!」と思い、日々人との関係にもやもやし、細かいことを気にして枝毛を作り、ときどきはっとし、血潮をたぎらせ、また涙してしまうのだ。

こまごまと見どころと心寄せどころ
他にも、お父さんのトレーナーの胸の文章とか、お母さんの振り切れぶりとか(あの髪型は天パなのか?)、擬音とか、商品名とか、へんなところがいちいちおもしろくて飽きない。ものすごくファットな人のお昼ごはんが、それにふさわしいボリュームだったりね。
12巻が最新刊だけど、全体に★★★★★★★。12巻は3つ。ぶちぬきで4つなのは9巻だけど、これはブライアンと金子信一博士のせいです。

ただのdreamer 人はいうけれど
  この地上にあふれる全ては
僕に似た昔の誰かが 夢見てはかなえてきたもの 
(TM NETWORK「Fool On The Planet」)

それぞれのポイントは違うだろうけど、1回以上の涙腺崩壊必至。休みの前日に箱ティッシュを傍らに置き、万全の体制でイッキ読みすることを推奨! 今年も展開が楽しみな作品だ。

1巻 2008.3、2010.6第11刷、222p、552-
2巻 2008.6、2010.6第11刷り、223p、552-
3巻 2008.9、2010.6第8刷、223p、552-
4巻 2008.12、2010.6第7刷、220p、552-
5巻 2009.3、2010.6第5刷、223p、552-
6巻 2009.6、2010.6第5刷、223p、552-
7巻 2009.9、2010.6第5刷、223p、552-
8巻 2009.12、2010.6第5刷、223p、552-
9巻 2010.3、2010.6第3刷、223p、552-
10巻 2010.6、247p、552-
11巻 2010.9、223p、552-
12巻 2010.12、223p、552-

JUGEMテーマ:読書
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木尾士目『ぢごぷり』第1巻
木尾士目『ぢごぷり The Princess of The Hell』第1巻
2009.5、講談社、226p、533-


3月のある晴れた日、双子の姉はぶじに産院を退院した。
ほんの1年前は、同じ学校通っていたのに、
思えば遠くに来たもんだ。
わたし、日野かなめ、姉は沖浦あゆみ、ともに18歳。
これからふたりで、夢子ちゃんを育てていく。

育児はたいへんだと聞くけれど、でもわたしも育児書はいろいろ
たくさん読んだし、お姉ちゃんは、ちょっと完璧主義なとこもあるけど
「運動以外は何でもできて」「誰にも優しく」「丁寧に穏やかに」
「でも自分には厳しい」「私の自慢のお姉ちゃん」だから、

ふたりでも、きっと大丈夫。
-----------
木尾士目真骨頂。
『げんしけん』後期よりも、さらにまるまるとした絵柄で、
で、このディープな話かい、というギャップが、
なんだか『ディエンビエンフー』みたいな(笑。

アンバランスなほどに大きな瞳、細い描線で丹念に描かれる
簡略化ばりばりのアニメ絵の母&叔母に対して、
非情なほどリアリズムに徹したしわくちゃな顔で描かれる新生児。

「♪この赤ちゃんはー、すごいいい子ちゃんなんだー」
退院当日、入院中に作った歌を歌いながら授乳をする姉。
できれば完全母乳を目指したいし、
おしりふきも、市販のものではなく脱脂綿で自作。
布おむつにもしたいけど、さすがに紙かな。

しかし、繰り返す夜泣き、合わない授乳タイミング、
おっぱいしか飲んでいないのに大量の排便、
そのたびにおむつから漏れて、シーツから全部取り替え。
いつまで続くのか、この疲労。

会陰切開→縫合の傷はいつまでも痛いし、
誰にもいえないけど尿漏れも続く。
時間の感覚は薄れてゆき、常にぼやっとする頭。

友だちに子ども生んだ人なんかいないし、相談できる人もいない。
妹は親身になって家事をしてくれるし、赤ん坊の面倒もみてくれる。
でもそのたびに自分が、
そんなこともひとりではできない人間なのだとと思えてくる。
拭いがたい孤独感。

育児書は、本ごとに書いてあることが違うし、
自分が知りたいことが書いてある本がそもそもない。
こんなにたいへんなのはわたしだけなの?
襲いくる不安。

自分の母乳だけで育っているのに、こんなに頑張っているのに
泣いているところを抱き上げても身を捩って逃れようとする
自分の子ども。
もしかしてハズレ…?
こんなことを思うわたしは母親失格…?

と、日に日にうつになっていく姉の独白はあまりにリアルで、
それにけなげに尽くしていく妹とのかけ合い、衝突の描写は
まさしく木尾士目。
『げんしけん』では登場人物が多すぎて、
個々人の内面描写は特定のキャラでしか描かれなかったし、
どうしてもちょっと浅いものになってたけど、
これは何しろ登場人物が2人と2分の1しかいない(笑。
どうやら現在ここにいることができない夢子の父らしき人物の、
拭いがたい存在感、不在の存在感が底流にあるようではあるけれど。

さあ、come back『五年生』!
好きなだけがっつりやってくれ!(笑
たのしみだ!
-----------
と、作品論とは別件で、育児なんて絶対に
ひとりでやるもんじゃないな、とも思う。
ここでは双子の妹という、限りなく自分に近い人物が、
ここまで親身になって近くにいるのに、ここまで落ち込める。
もしこれをひとりでやって、家事と両立するなんて無理。
逃げ場のないマンションの部屋で、ひとりでそんなことしてたら
そりゃ自分か子どもに当たるしかなくなっていくよね。
追いつめられていくよね。
ネグレクトも含めた虐待って、社会も含めた環境の産物だなあ、
と実感してしまう。
願わくば、この姉妹に、他者からの手伝いの手が伸べられますよう。
そして「自分の子どもをかわいいと思えない」ことは
別におかしいことではなく、
母性というものは神話に過ぎず、
別にそのままでじゅうぶんであることを、
あゆみに教えてくれる人がいますように。

★★★★
2009.5.28購入

ぢごぷり 1 (アフタヌーンKC)
ぢごぷり 1 (アフタヌーンKC)
木尾 士目
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木尾士目『ぢごぷり』第1巻
木尾士目『ぢごぷり The Princess of The Hell』第1巻
2009.5、講談社、226p、533-


3月のある晴れた日、双子の姉はぶじに産院を退院した。
ほんの1年前は、同じ学校通っていたのに、
思えば遠くに来たもんだ。
わたし、日野かなめ、姉は沖浦あゆみ、ともに18歳。
これからふたりで、夢子ちゃんを育てていく。

育児はたいへんだと聞くけれど、でもわたしも育児書はいろいろ
たくさん読んだし、お姉ちゃんは、ちょっと完璧主義なとこもあるけど
「運動以外は何でもできて」「誰にも優しく」「丁寧に穏やかに」
「でも自分には厳しい」「私の自慢のお姉ちゃん」だから、

ふたりでも、きっと大丈夫。
-----------
木尾士目真骨頂。
『げんしけん』後期よりも、さらにまるまるとした絵柄で、
で、このディープな話かい、というギャップが、
なんだか『ディエンビエンフー』みたいな(笑。

アンバランスなほどに大きな瞳、細い描線で丹念に描かれる
簡略化ばりばりのアニメ絵の母&叔母に対して、
非情なほどリアリズムに徹したしわくちゃな顔で描かれる新生児。

「♪この赤ちゃんはー、すごいいい子ちゃんなんだー」
退院当日、入院中に作った歌を歌いながら授乳をする姉。
できれば完全母乳を目指したいし、
おしりふきも、市販のものではなく脱脂綿で自作。
布おむつにもしたいけど、さすがに紙かな。

しかし、繰り返す夜泣き、合わない授乳タイミング、
おっぱいしか飲んでいないのに大量の排便、
そのたびにおむつから漏れて、シーツから全部取り替え。
いつまで続くのか、この疲労。

会陰切開→縫合の傷はいつまでも痛いし、
誰にもいえないけど尿漏れも続く。
時間の感覚は薄れてゆき、常にぼやっとする頭。

友だちに子ども生んだ人なんかいないし、相談できる人もいない。
妹は親身になって家事をしてくれるし、赤ん坊の面倒もみてくれる。
でもそのたびに自分が、
そんなこともひとりではできない人間なのだとと思えてくる。
拭いがたい孤独感。

育児書は、本ごとに書いてあることが違うし、
自分が知りたいことが書いてある本がそもそもない。
こんなにたいへんなのはわたしだけなの?
襲いくる不安。

自分の母乳だけで育っているのに、こんなに頑張っているのに
泣いているところを抱き上げても身を捩って逃れようとする
自分の子ども。
もしかしてハズレ…?
こんなことを思うわたしは母親失格…?

と、日に日にうつになっていく姉の独白はあまりにリアルで、
それにけなげに尽くしていく妹とのかけ合い、衝突の描写は
まさしく木尾士目。
『げんしけん』では登場人物が多すぎて、
個々人の内面描写は特定のキャラでしか描かれなかったし、
どうしてもちょっと浅いものになってたけど、
これは何しろ登場人物が2人と2分の1しかいない(笑。
どうやら現在ここにいることができない夢子の父らしき人物の、
拭いがたい存在感、不在の存在感が底流にあるようではあるけれど。

さあ、come back『五年生』!
好きなだけがっつりやってくれ!(笑
たのしみだ!
-----------
と、作品論とは別件で、育児なんて絶対に
ひとりでやるもんじゃないな、とも思う。
ここでは双子の妹という、限りなく自分に近い人物が、
ここまで親身になって近くにいるのに、ここまで落ち込める。
もしこれをひとりでやって、家事と両立するなんて無理。
逃げ場のないマンションの部屋で、ひとりでそんなことしてたら
そりゃ自分か子どもに当たるしかなくなっていくよね。
追いつめられていくよね。
ネグレクトも含めた虐待って、社会も含めた環境の産物だなあ、
と実感してしまう。
願わくば、この姉妹に、他者からの手伝いの手が伸べられますよう。
そして「自分の子どもをかわいいと思えない」ことは
別におかしいことではなく、
母性というものは神話に過ぎず、
別にそのままでじゅうぶんであることを、
あゆみに教えてくれる人がいますように。

★★★★
2009.5.28購入
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熊谷隆敏『もっけ』
熊谷隆敏『もっけ』講談社
1巻:2002.6初版、2004.7第8刷、182p、476-
2巻:2003.3、198p、476-
3巻:2004.3、187p、505-
4巻:2005.3、207p、505-
5巻:2006.1、191p、505-
6巻:2006.11、214p、505-


姉の静流は見鬼、妹の瑞生は憑かれやすい体質、
ふたりにとってこの世界はなかなかに生きにくい。
両親がいる都会ではあまりに危険が多すぎるため、
拝みをしている祖父と、いなかで暮らしているが、
それでもいつか、祖父がいなくなった場合、
自分たちはぶじに、他の人に迷惑をかけずに
生きていけるんだろうか、という心配を常にしている姉妹。
祖父は母の父だが、母自身は姉妹の体質を理解せず、
「普通に」「外の世界で」ふたりが暮らせるよう願っている。
一方父は、そういうことがあることを自然に受け入れ、
ふたりが安定していきていければよいと思っている。
しかしもちろん、こんなに理解があるのは家族とわずかな
周囲だけ。
その中でも、移ろう季節の中で、大切なものを見つけ、
慈しみ、考え、ときには痛い目を見る(笑)ふたりの日々。
-----------
なんてアフタヌーンな話なんだ(笑。
ちょっとろりーなとことかな。←偏見?
ふたりはすごく生きにくそうだけど、
そのことに折れそうになるときもあるけど、
基本的に健やかで、自然体なのがよいと思う。
アクションのない妖怪まんが。

友人が「で、『もやしもん』とはどこが違うわけ?」と
言ってたのにうけた(笑。
うーん、実害があるところかなあ?(笑
妖怪も神も、あやしいもんは一緒くたに「もっけ」なので、
そのへんの混淆ぐあいも『もやしもん』に似てるかな?
モノたちがちょっとかわいらしいところも。

2008.4.16読了 ★★★
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小玉ユキ『羽衣ミシン』
小玉ユキ『羽衣ミシン』小学館、2007.8.29、
191p、390-

羽衣ミシン
番外編 かえりみち


橋を造る人になることを夢見る工学部3年生の陽一。
夢はあるけれど、いまいちぱっとせず、
課題をこなすのでいっぱいいっぱいの日々。
人のいいかれは、初冬の朝の工事現場で、
足場にひっかかっている白鳥を助ける。
その夜、バイト帰りの陽一のもとに、長い黒髪に
白いタートル、白いフレアスカート、白いショールをまとった
少女が、恩返しだとやってきた。
美羽と名乗った少女は、陽一の妻だと言い張り、
陽一の幼なじみと友人が運営するネットショップに、
縫い物の作品を卸し始めるのだった。
-----------
うん、白鳥の恩返しの話。
そして異類との婚姻がハッピーエンドに終わったためしは
古今東西ないのだ。
陽一は最後まで美羽を、その白鳥だとは思っておらず、
そのことに気づくのは友人の沓澤のみ。
話のポイントを陽一と美羽だけでなく、
陽一の友人の沓澤と、幼なじみの糸織の関係にも広げたところが
ただの異類婚姻譚でなくしているのかな。

番外編は陽一のもとを去った美羽の孫らしい少女が、
「おじいちゃん」陽一を見に来る話。
沓澤と糸織の子どもと関わらせるところ、というか
幼なじみ、子どもの頃に出会っていた、という少女マンガ好みの
設定を、ここでも使うか、という徹底ぶりに感銘(笑。

2007.12購入
★★★
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こなみかなた『チーズスイートホーム』第4巻
こなみかなた『チーズスイートホーム』第4巻、講談社、2007、
150p、848-


チーのために、ペット可のマンションへの引っ越しを決意した山田家。
引っ越し準備のときからチーはパニック気味。
新居にもなかなかなじめない。
しかし、山田家の面々が一緒にくつろぐさまを見て、ようやく落ち着く。
「チー、ここがいい」

ちなみに新居のご近所さんは、
インコ、
ねこ(スコティッシュフォールド・ロングヘア)のアリス、
ラップイヤーラビットのミーちゃん、
お隣の草野さんちの犬、デイビッド。

デイビッドお利口ー。いぬも悪くない。
チーは早く、もう少し大人になれ(笑。
クロいのを思い出してしんみりできるくらいだから、
だいぶ成長したかもだけど。
山田家はこんなに、人間と同じものをチーにあげていいのかな。

20070910購入
★★★
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川原泉『レナード現象には理由がある』
川原泉『レナード現象には理由(わけ)がある』
白泉社、2006(第6刷、2007)、177p、600
-

県下随一の偏差値を誇る、私立彰英高校3年生の蕨よもぎと、隣の席の
秀才、飛島穂高との、マイナスイオンを媒介とした癒し系交流、
「レナード現象には理由がある」
3年生の中で、ちょうど真ん中の成績でリスのチャッピーを飼っている
亘理美咲と、かの女と同点同位の隣の席の高校生作家、友成真一郎との、
チャッピーの餌であるどんぐり拾いを媒介とした脱力系交流、
「どんぐりにもほどがある」
柔道部の主将を引退したばかりの保科聡真は、隣に越してきた利発な小学6年生、
若宮遥の背中に、羽が見えて仕方ない。同級生の友成は、それを
「一目惚れの手垢のついた表現」と称した。小学6年生に!?
動揺する保科くんと遥の、カップ麺ではなく袋麺を媒介にした
のんびり系交流、「あの子の背中に羽がある」
6歳年上の兄が「未来を約束した人」と連れてきたのは新進気鋭の男性弁護士、
という未曾有の困難に立ち向かう日夏晶の隣の席になったのは、
よりによってその弁護士の弟、雨宮拓斗。
隣のユリアナ女子高の生徒を食いまくっていることで有名な雨宮だが、
晶とのZ会の参考書を媒介にした真面目系交流、「真面目な人には裏がある」
の4本を収録。

2007.5.18購入
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安野モヨコ『監督不行届』
安野モヨコ『監督不行届』祥伝社、2005(第11刷2006)、158p、800-

けっこう有名なエッセイコミック。
カントクくん(映画監督)とロンパース(漫画家)夫妻の、ヲタい日々の
感興を綴る、ムダにヲタ情報に詳しくなれるまったりまんが。
おもしろかったけど、正直、絶賛、というほどでもないような。。
それよりロンパースは、結婚beforeのカントクくん(p.132参照)と
何故つきあおうと思ったのか、というほうが気になるぞ!(笑
あと、映画「恋の門」撮影話もおもしろかった(笑。

2007.3購入
★★★
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木尾士目『げんしけん』第9巻
木尾士目『げんしけん』第9巻、講談社、184p、514-
最終巻


まさに「卒業そして完結」(by帯)笑。
たとえば『五年生』のように、キャラの内面にがっつり入るとか
登場人物同士のものすっごい濃いコミュニケーションを
延々描くとか、そういうことをするには、このサークルでは
人数が多い。
となると、当然幾人かのキャラを選定しなければならなくなる。

…いつのまに大野さんがこんなに前面に?
…いつのまに笹荻のコイバナ(しかし古いいい回しだね >自分)?
…必要だったのか、スージー?

など、ちょっと特定のキャラに比重かかり過ぎな印象が
全作を通して否めない。
なんか、こんなの読みたかったんじゃないよーな、と
いうよーな。

覚悟が足りなかった笹原が、「それ」を自覚していくプロセスとか、
自分に理解できないものを、あるときは暴力を使ってまで
排除していた咲ちゃんが、次第にそうでなくなっていく。
「お前なんもねーな」「マジない…」だった恵子が、
うまくいかなかったとはいえ、自分で大学受験を目指したり、
それこそ「一般人」「違う星の人」と、自分との差異を
ことさらに主張して、オタク以外の人間との距離を必要以上に
取っていた斑目が、咲ちゃんを好きになったり、
摩擦係数を極力低くして周囲との直接衝突を避けていた面々、
特に久我山などが笹原と大喧嘩をしたり、

というようなとこが、わたしにとってはおもしろい部分だったし、
作中のアニメやらゲームやらの元ネタを探すのにも興味ないし、
だからこの作品が、どうも作品自体の進みたい方向とは
別の部分で高く評価され、評価されすぎているような気がする。
同人誌とか、全然いらなかった。おもしろくなかったし(一応買った)。
わたしはこれを、「アキバ系青春物語」(by帯)だとは思わないな。

もう、途中から属性とかなんとか、強調されすぎ。
個人が心引かれるものに、ある程度の傾向があるのは当然。
でもその傾向の中からエッセンスを取りだし、
そのエッセンスのみを愛でるのはどうなんだろう。
あるいはエッセンスを持っているが故に、そのキャラを
好きになる、というのも欲望の方向としてどうなんだろう。
でも属性って考え方はある意味、構造分析の手法だよな、と
好意的にも感じるけど、でもね。

とりあえず、咲ちゃんの前髪万歳だな(笑。
★★★
20061215購入
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草間さかえ『災厄のてびき』
草間さかえ『災厄のてびき』東京漫画社、2006、213p、619-

災厄のてびき/交際のてびき/共犯のてびき/
てびきのまとめ/散髪唱歌/ピンナップ・スタア/
雨のち晴れ、ところにより雪/ばんごはん


今年知った漫画家ベスト3入り確実か草間さかえ。
最初に読んだ作品はそうじゃなかったので知らなかったけど、
BLの人なのね。
人なのねというか、BLのジャンルで有名な人なのね。
普通BLは全然手に取らないけど、この人、このジャンルじゃなくても
ついでにいうとエロじゃなくてもやってけるんじゃないかな。

特徴的な描線、その抜き方がとてもセンスがいい。
デジタルトーンもいやみにならず。
描くべきところと略していいところのバランスがいいんだろうな。
作者曰く「線が太いのでお気を付けください」らしいけど(笑。

表題作含む「てびき」4部作はなかなかよいけど、
個人的ベストは、こんな散髪屋やべえって、の意味もこめて
「散髪唱歌」。ポマードかぁ…

★★★★
20061102購入。
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