活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
小川洋子『海』
小川洋子『海』新潮社、2006.10、p.189、1300-


風薫るウィーンの旅六日間
バタフライ和文タイプ事務所
銀色のかぎ針
缶入りドロップ
ひよこトラック
ガイド


短編集。全体に軽め。通勤電車で1日持たなかった(帰路の途中で読了)。そういう日に限って電車遅延して時間持て余すんだよなあ。って、それはこの本には関係ないかw
以下備忘。
。泉さんと結婚して大丈夫なのか。この家族大丈夫か。でも鳴鱗琴ってちょっと興味ある。
風薫るウィーンの旅六日間。ツアーで同室になった琴子さんの昔の恋人を養老院に訪ねてかれを看取る。こんなウィーン旅、むしろ悪くないけど琴子さんにいつか切れそう。
バタフライ和文タイプ事務所。和文タイプライタと活字管理人。活字に萌えもえするので興味深いが、あまりに予想を超えない展開。
銀色のかぎ針。おばあちゃん!
缶入りドロップ。運転手さん!
ひよこトラック。孫娘!
ガイド。誇り高き「公認ガイド」の息子の初ガイド。誇り高き少年にほれぼれ。

運転手さんのひそやかな努力が素敵な缶入りドロップ、「僕」の細やかな努力と感性が素敵なガイド、がマイベスト。
★★★
20101024借

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小川洋子『博士の愛した数式』
小川洋子『博士の愛した数式』新潮文庫、2005.12、
291p、438-
解説:藤原正彦
初出:2003.7、新潮社


28歳で、家政婦歴10年のベテランである「私」が派遣されたのは
交通事故の後遺症で、記憶が80分しか保たれない、
もとは新進気鋭だった数学者「博士」が住む離れだった。

数字を介してしか、世界と関われない博士にとって、
私は毎朝、新しい家政婦。
その服にはおびただしい数のメモが貼りつけてある。
うまくいかない家政婦生活が2週間過ぎたとき、
博士の袖口に新しいメモがつけてあるのを見つけた。
そこには「新しい家政婦さん」という語とともに、
私と思しき似顔絵が書かれていた。
その日から、博士と私の間に、確かに違う関係が築かれ始めた。
-----------
旅本として文庫を借りようと思い、あまり重くなさそうなので
チョイスしたが、予想以上によかった!
私の小学生の息子(絶壁頭なので博士に「ルート」と名づけられた)との
親密で破られぬトライアングル。
その関係をつなぐ、数字と数学の、深遠な淵。

個人的には、「未亡人」という名しか与えられぬ
博士の義姉に興味がある。
かの女が博士の兄と結婚したのは、
博士が事故にあってからなのだ。
ひとりでは生活できぬ博士を支え続けるために
かの女はその道を選んだのではないか?
いつまでも、結ばれることのない秘めた感情。
語られぬ、過去の時間の気配。
全てを内包してある、完全数、28。

実に静謐な物語だった。


★★★★
20100601
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小川洋子『夜明けの縁をさ迷う人々』
小川洋子『夜明けの縁をさ迷う人々』
角川書店、2007.8、206p、1300-

曲芸と野球
教授宅の留守番
イービーのかなわぬ望み
お探しの物件
涙売り
パラソルチョコレート
ラ・ヴェール嬢
銀山の狩猟小屋
再試合


さまよいすぎ(笑。
短編集なので、寝る前に少し読もうと開いたが、
アンハッピーエンドが続き、せめてもう少し読後感がよいやつに
当たるまで…と読んでいたら、「パラソルチョコレート」まで
きてしまった(笑。
ちょっと『貴婦人Aの蘇生』に似てる気がする。


★★
20090703借
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いしいしんじ『ポーの話』
いしいしんじ『ポーの話』新潮文庫、2008.10
523p、667-、初出2005.3新潮社


いしいしんじ…相変わらずすごいよ。

★★★★
2008.10.4購入
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岩井志麻子『楽園に酷似した男』
岩井志麻子『楽園に酷似した男』朝日新聞社、2005.1、
213p、


ソウルとホーチミンと東京とに、それぞれ愛する男を持ち、
行き来する「私」。
でもいちばん愛している男は、
別れた夫のもとに置いてきた息子。

1文につき1段落。
肉欲と快楽と迷走の果てに、次第にめまいが
起きてくるかのような文体は、ちょっと笙野頼子ふう。


20080523借
★★
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江國香織『間宮兄弟』
江國香織『間宮兄弟』小学館文庫、2007、
318p、552-、初出:2004.10、
解説:三浦雅士


酒造メーカーに勤める35歳の秋信と、
小学校校務員で32歳の徹信の兄弟は、
2LDK138000円のマンションにふたりで住んでいる。
どうにも女性にもてるとはいえないふたり、
「もう女の尻は追わない」(p.11)と決めた日から、
人生は俄然楽になった。
おだやかに過ぎるふたりの日々。
だったはずなのだが。
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ひとつの家の中で快適に暮らすための、
他人にはわからないルールに守られて生きる兄弟。
そこに他人が介在するとき、どう対処するかという
人間存在に不可欠なスキル。
そこがどうにも不器用なふたりがどう生きるか。

久々にちょっとおもしろかったかな。
映画化する理由がわかる気がする。
うーん、でもなあ。
人物の心の機微というか、もう少し丁寧に追ってもいいんじゃないかな。
三人称ゆえの歯がゆさなのかな。

解説がちょっとよかった。
っていうか、それ村上春樹論じゃないの?
というつっこみも含めて(笑。
でもまあ、本文にも出てきたからいいか、春樹。

20071204購入
★★★
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江國香織『スイートリトルライズ』
江國香織『スイートリトルライズ』幻冬舎、2004、
212p、1400-


飛行機の中で知りあった瑠璃子と聡は結婚して3年目。
聡が一目惚れして口説いたのに、今や聡がいなければ
生きていけないのは瑠璃子の方だ。
テディベア作家として売れっ子の瑠璃子は、毎晩7時半に
帰宅する偏食の聡のために、バランスよく、
好物を食べさせるのを楽しみにしている。

秘密のない、静かな生活。
それぞれに、お互いに対して不満はあるものの。
しかし、その均衡を破る出会いがふたりに訪れる。
聡には、久々に再会した大学の後輩であるしほが、
瑠璃子には、かの女のベアを恋人のために買っていった
津川が。
そして、互いに積み重ねられていく隠し事と嘘。
-----------
うーん。
江國のモラトリアム夫婦(勝手に命名)小説の中では
まだ読めるかなあ。
この気怠さにいらつきながら、でも何回も手にとって
しまうのは何故だろう(笑。
それにしても、浮気をしたぐらいで自分を「自由だ」とか
感じる男なんてばかで嫌いだ。
結局女は家に帰り、男は家の外に「自由」を求めるのな。
そのために重ねられる嘘は、家を持続させるための
「あまいちいさなうそ」。

20070921借
★★★
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小川洋子『ブラフマンの埋葬』
小川洋子『ブラフマンの埋葬』講談社、2004、146p、1300-

とある出版社が所有する<創作者の家>の管理人である僕のもとに、
ある夏の日、ブラフマンはやってきた。
きつねに襲われたような生傷を負って、やせ細った姿で。
長い胴、短い四肢、指のあいだに水かきを持つブラフマンは、
それから僕のもとで過ごすことになる。

<創作者の家>を訪れる多くの芸術家たち、
古代墓地のある丘を背後に持つ、浮世離れした小さな村、
村から少し離れた場所にある<創作者の家>の静謐な日常。

晩秋にブラフマンの葬儀をおこなう。
墓碑銘は<ブラフマンここに眠る>。
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淡々と過ぎゆく閉じた日常。
古代から続くかのようなある種の閉塞感を一時的に壊す、
雑貨屋の娘と、月に1度かの女に会いに来る恋人。
それでもすべては、ラベンダー色の棺に封じられ、
碑文彫刻家にそのエピタフを刻まれるまでのことに過ぎない。

といういっちゃった感じに閉じた世界の表現は、
相変わらず秀逸。
全然それが押しつけがましくなく、むしろ心地よい。

★★★
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江國香織『思いわずらうことなく愉しく生きよ』
江國香織『思いわずらうことなく愉しく生きよ』
光文社、2007、396p、648-、解説:栗田有起


「思いわずらうことなく愉しく生きよ」は、父が言う犬山家の家訓。
父が家を出たあとも、犬山家の三姉妹はそのことを肝に銘じて
大きくなってきた。
ふたりの姉に変わっていると心配される三女の育子、
恋にも仕事にも、自分の流儀を貫く、かたくなな次女の治子、
結婚して「フヌケ」になったと治子に非難される、おっとりした
長女の麻子。
それぞれのバランスは、麻子にDVの疑いが生じたときに崩れ始める。
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家族ものなら『流しのしたの骨』に軍配。
★★
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江國香織『流しのしたの骨』
江國香織『流しのしたの骨』新潮文庫、1999、310p、514-
(単行本、マガジンハウス、1996)
解説:福尾野歩



宮坂家は、
高校卒業後、特に何もしていない19歳の三女の「私」、こと子と、
おっとりしていて、でも頑固者の、お嫁に行った長女のそよちゃん、
やせっぽちで神経質で、心優しい次女のしま子ちゃん、
平らかな心の「小さな弟」、中学生の末っ子の律、と
妻であることを重んじる、料理上手なたくましい「詩人」の母、
規律を重んじる、家族と母を深く愛する無口な父、
の6人家族だ。
だいぶ(ちょっと)風変わりな、しかし暖かく幸福な家族の、
だいぶ(ちょっと)風変わりな、しかし暖かく幸福な日常、
プラス少しの禍福。
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6月のちょっとした用事が終わるまで、図書館に本を借りに
行くのをお休みすることにする。かわりに、私物の本を読み直そう
(借りに行かない意味がないじゃないか)の会、第1回(笑。

文庫の見返しに2000年8月に購入、とあるけれど、買ったときより
読み返した今の方が、染みるような気がした。
宮坂家はだいぶへんな家族なのだけれど、ひとんち、って他人が
見たら、多かれ少なかれ、きっとこんな感じなのだ。
ってことが、実感としてわかるようになったからかな(笑。

しかしここんち、基本的にお父さんの収入だけでこんなに維持できる
なんてすごい(笑。絶対金遣いが荒い気がする(笑。
ローンなしの持ち家なのかな。
お父さんは実はすごく高給取りなのかしら。
とか考えて読んではいけないんだろうなあ(笑。

★★★★
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