活字中毒者の乱読日記 印象批判100%
気軽なフレンチを召し上がれ:近藤史恵『タルト・タタンの夢』
近藤史恵『タルト・タタンの夢』東京創元社、2007.10、214p、1500-

タルト・タタンの夢
ロニョン・ド・ヴォーの決意
ガレット・デ・ロワの秘密
オッソ・イラティをめぐる不和
理不尽な酔っぱらい
ぬけがらのカスレ
割り切れないチョコレート


料理長の三舟さん、料理人の志村さん、ソムリエの金子さん、ギャルソンのぼくこと高築。フレンチレストラン「パ・マル」は、この4人で回している。「本当にフランス料理が好きな人間が集まってくる」「ワインにおごらなければ、五千円もあれば、十分楽しめる」(10.10-12)お店。
常連さんに恵まれるこの店に、常連さんとともに持ち込まれるほんの少しのミステリを、無愛想な三舟さんが、フレンチの知識と技術で解き明かしていく短篇集。

実に気軽にふわふわと軽く、さらっと通勤電車1往復で読了できる、ほんとの意味でのライトノベルかも。ミステリとしてはほとんど練られていないので、そこにはあまり期待しないが吉。

★★20101128借
JUGEMテーマ:読書

小説 カ行 / comments(0) / trackbacks(0)
栗田有起『オテルモル』
栗田有起『オテルモル』集英社、2005.3、180p、1500-


同居している姪が小学校に上がったのをきっかけに就職した。就職先は「オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン」。地上0階、地下13階。営業時間は日没から翌朝の日の出までの、会員制契約型宿泊施設。客室数は99室。ほぼ連日満室を記録する。ここは、眠るために客が訪れるオテルなのだ。
-----------
続きを読む >>
小説 カ行 / comments(0) / trackbacks(0)
栗田有起『コトリトマラズ』
栗田有起『コトリトマラズ』集英社、2010.3、247p、1500-


小さなインテリアデザインの会社で、中堅に差しかかる年代のデザイナーとして働くモッチー。人生最初の記憶は、母が、知らない男性(の死体)にキスをしている場面だ。大きくなってから母を問い詰めても、そんなことは知らないといい張る。ともあれ、それがモッチーの、人生最初の記憶。
社長の能美さんと、奥さんの裕恵さんとで10年前に起こした会社は、今は10数名の社員が、仲よくだが忙しく働いてる。そんな中、裕恵さんが倒れ、検査入院した。たいしたことはないけど念のため、という裕恵さんを見舞いに、くだものを持って同僚のカヨと病院を訪れる。裕恵さんがすきなのは、桃と巨峰とさくらんぼ。
お持たせの桃を一緒に食べながら、裕恵さんに対して罪悪感も、優越感もないことをしみじみかみしめる。社長を、会社の外では能美さんと呼んでいることも、会社に入ってすぐに能美さんとは体の関係になったことも、ふたりの間にあるものが恋愛ではなく運命であることも。
少なくとも、裕恵さんが出てこれなくなってしばらくして、会社がうまく回らなくなるまでは。
----------
栗田有起のちょっと長編。
母と妹と裕恵さんとカヨと、たくましく葛藤の対象になるのも、励まされるのも、頼りになるのも、かなわないと思うのも、モッチーの周囲の女たちだ。とことんまで影の薄い父も、母が愛し母を愛し、しかし生涯法的には結びつくことなかった母の恩師も、能美さんでさえも、男たちはすべからく、過ぎていく人、だ。選び取った道を、たとえそれが孤独の中を歩むものだとしても、毅然として、しかしいきがらず、かの女たちは顔をあげて行くのだろう。

カバーも、本文の前後にも、小鳥止まらずのイラストだが、作中おいては、ラストシーンまで目木に関する描写はない。能美さんが出張のおみやげにくれた、小鳥が描かれた豆皿を眺めながら思い出すのだ。子どもの頃に、やぶに絡まって死んでいる小鳥を見かけ「もしかしたら、あの鳥が、そこにいたいのかもしれないと思」(246)って、そのままに立ち去ったことを。
枝に密生する棘のせいで、小鳥も止まらないことが名前になった木。春には白い小さな花を、秋には赤い小さな実をつける。

★★★
20100919借
小説 カ行 / comments(0) / trackbacks(0)
倉橋由美子『酔郷譚』
倉橋由美子『酔郷譚』河出書房新社、2008.7
155p、1500-
初出:「サントリークォータリー」69〜73号、75号、76号

桜花変化
広寒宮の一夜
酔郷探訪
回廊の鬼
黒い雨の夜
春水桃花源
玉中交歓


慧君が、九鬼さんのお店で真希さんなる美女に出会い、
すっかりやられちゃって、同居しちゃって結婚しちゃって
わーい、おめでたいね、というのを、怪しいお酒が絡む
短編で連作にしました。って話。←おい(笑。

って、舞ちゃんは!?(笑
まあ舞ちゃんはハナから慧君には片恋というか
いとこだからというか、そういうのだから、まあいいのかな。
入江さんと桂子さんが正式に結婚しているということは、
『シュンポシオン』『ポポイ』よりもずっとあとの時間、
ということなのだから、舞さんももう佐伯さんと
結婚してるんだろうな、たぶん。
と、よそんちの恋愛事情を気にするのであった。。

しかし『ポポイ』めろめろのわたしとしては、このシリーズは
どうしても舞視線になってしまうので、なんというか、
こんな慧君見たくない!
というか(笑、「スーパーノヴァ」然としている慧君のが
好きよ(はぁと)とか思ってしまう。
わたしも太陽に恋してしまったのかなあ。

短編ということがたぶん強く影響してると思うけど、
異世界どっぷり度は低め。
何しろ慧君は毎回ちゃんとこっちに戻ってきてるしね(笑。
展開が早い分、「めくるめく」感はとてもある。
でも旧仮名遣いでもないし、倉橋度もちょっと低めなのかも。
ただ、この雰囲気とことば遊びの妙にひたるべし。
ああ追悼倉橋由美子。惜しい人を亡くしたよ。

★★★
20090305借
小説 カ行 / comments(0) / trackbacks(0)
木地雅映子『悦楽の園』
木地雅映子『悦楽の園』ジャイブ、2007.10、415p、1800-

ママは15歳で真琴を生み、そのまま亡くなった。
一度だけ会ったことがあるパパは革命家だったと聞いている。
自宅は出入りの多い家で、校区を越えた不登校児のたまり場になったり、
母子ごとDVから逃げてきた人が一時避難したりする家。
自室には3重に鍵をかけている。
騒がしさから逃れるために勉強に没頭するから優等生。
おばあさまと真琴が母屋に、ひいおばあさまが離れに、
慧実伯母さま、留美子叔母様が市内のマンションに住んでいる。
ひいおじいさまもおじいさまも、存命だが戸籍上は他人、
相原家は女系で、かつ結婚運が悪い一家なのだ。

中学に進学した真琴は、前の席に座る南になつかれる。
南は4月1日生まれなので、4月2日生まれの真琴とは、ほとんど1歳違いだ。
エイプリル・フールに生まれたからって、
なにもここまでバカに育つことないのに。
と真琴を嘆かせるくらい、南は軟弱で薄汚れていて、成績は悪く、
ちびで、突然失神したり、訳のわからないことを口走ったりする。
しかし南は、意外にも凡人ではなさそうな絵を描いたりしていて、
真琴に看過を許さない。
南と近づいたのをめずらしがって、茶髪のヤンキー、染谷が接近してくる。
この変わった面々に囲まれて、
本人もじゅうぶん変わっていると思われている、真琴の中学生活が始まる。
「普通」が求められ、無意識に押しつけられる中での、
パパとの約束を守るべく、決して妥協をしない日々が。
-----------
胸が痛くなる。

戦う相手は学校、などの目に見えるわかりやすいものではない、
おそらくこの社会という漠然としたもの、
どこまでいっても自分が包括されるもの。
その点で、真琴たちの喧嘩は、『ぼくらの七日間戦争』などより
よほど大きく、終わることがない。

悦楽の園を見つけ、そこへ向かう道筋に段取りをつけ、
そのことにむしろ協力的な家族がいて、それは幸せなことに違いない。
10代の人間にとって、逃げ込む場所は家族なわけだし、
外で生きづらいことがあっても、それでも大丈夫だと自分を肯定し、
外から隔離して守ってくれる家族があるのなら、おとなになるまでの時間、
そこで育っていけばいい。
南はアスペで学習障害で注意欠陥障害で発達障害で、ということが
わからずに、とてもつらい13年だったわけだが、
それが診断されたことによって、
それが理解できなかった家族がまるごと救済されることによって、
まるで違う少年に生まれ変わる。

でもその自身の逃げ場・足場として機能するような家族がなかったら?
外と同じように自分にある意味での「普通」=<塔>の中で生き続けることを求める家族だったら?
例えば南のような、<塔>の外で勝負することができるような才能を
持ち合わせていなかったら?

いろんな意味で疑義が浮かんでは消える。
真琴たちの生き方がひどく難しいこと、
幾度も折れそうになるようなことが起こるであろうこと、
そのつらさは、おそらく次世代にも起こりうるであろうことを、
30過ぎまで生きてきたわたしは知っている。
この本を読むであろう多くの「元」文学少女たちも知っている。

<塔>を出ることは、ひとりだけではあまりにたいへんだから、
本当の悦楽の園は、容易には手に入りがたいものだから、

この本は書かれざるを得なかったのかもしれない。とも思う。

だからこの本はある意味、祈りの書なのだ。
つらかった義務教育時代を慰撫する、
未だに生きにくい社会にもまれる日々を緩衝する。
-----------
文体としては、この手の三人称はあまり好みじゃないかも…。
限りなく真琴の一人称に近いのに、いきなり視点が他者に変わったり、
他者のモノローグが含まれたり、こういうのは書きやすいかもしれないし、
読むほうも状況を摑みやすくてよいかもしれないんだけど、
それでも、もっと、なんていうか、律してほしい、みたいな。

でもいずれにせよ、心揺さぶられる本であることは間違いなく。
木地雅映子の本は2冊めだけど、今回もそうだった。
でも自分的には題材勝ちな印象があるな。

この人の言及もすごかった。うん。参考までに。
はてなdiary「白くまシンドローム」<『悦楽の園』 木地雅映子


★★★
20081208present
小説 カ行 / comments(0) / trackbacks(0)
茅田砂湖『デルフィニア戦記』
茅田砂湖『デルフィニア戦記』

第1巻 放浪の戦士  1993.10(1996.5第7版)251p、800-
第2巻 黄金の戦女神 1993.11(2000.10第16版)254p、857-
第3巻 白亜宮の陰影 1994.3(2000.10第15版)229p、857-
第4巻 空漠の玉座  1994.6(2001.9第16版)220p、900-
第5巻 異郷の煌姫  1994.12(2004.6第19版)213p、900-
第6巻 獅子の胎動  1995.3(文庫版2003.7、322p、648-)
第7巻 コーラルの嵐 1995.7(文庫版2003.8、345p、648-)
第8巻 風塵の群雄  1995.11(文庫版2003.11、344p、648-)
第9巻 動乱の序章  1996.3(文庫版2004.1、322p、648-)
第10巻 憂愁の妃将軍 1996.7(文庫版2004.3、361p、648-)
第11巻 妖雲の舞曲  1996.11、236p、830-
第12巻 ファロットの誘惑 1997.3、254p、800-
第13巻 闘神達の祝宴 1997.7、246p、800-
第14巻 紅の喪章   1997.11、219p、800-
第15巻 勝利への誘い 1998.3、238p、800-
第16巻 伝説の終焉  1998.7、270-、850-
第17巻 遙かなる星の流れに(上) 1998.11、238p、800-
第18巻 遙かなる星の流れに(下) 1998.12、254p、800-
外伝  大鷲の誓い  2006.3、230p、900-


前国王の庶子ながら王位につき、善政を敷いていた現国王が、
その庶子であることを反対派に攻撃され、王座を追われて数年。
放たれた刺客に追われる国王を、ひとりの少女が手助けした。
少女は、ここではない世界からやってきた、本当は少年だと主張する。
その驚異の体力や武力、辛辣な精神と並はずれた美貌とのギャップが
周囲との軋轢を生み、人間からは「化け物」とののしられて
生きてきたという。
しかし国王は、命の恩人である少女を化け物とは思えず、
ふたりは厚い友情で結ばれることになる。
かくして、単身であった流浪の王はただひとりの同盟者と結び、
王座奪還への道のりを歩み始める。
-----------
とはいっても、4巻で奪還は成功し、あとは国境を接する諸外国との
折衝やら戦争やらで18巻まで。
なんていうか、世界観とか設定とかがあまい気がしてあまり没頭できない。
語彙も少ないし、表現も陳腐だし。
でもそれは作品のせいじゃなく、わたしの年齢のせいなんだろうな。
友人がむりくり貸してくれたんだけど、うん、読みました。。みたいな。
そして衝撃のデウス・エクス・マキナ(笑。
これを許してしまったらなんでもアリになってしまうじゃないかー。
まあ、この不平等さと好き勝手やり放題ぶりは
神ならではなのかもしれないが。
途中、最寄り図書館で文庫版を借りてみた。
新書版の表紙とかイラストとかがうるさくてしかたなかったので、
文庫版のシンプルさはむしろ好ましかった。

人間は見た目で人を評価し、勝手にその評価に基づいてその人を見、
その評価からはずれたふるまいをすると、容易にその人を阻害し迫害する、
というのがもうひとつのテーマなのかな。
そのへんはおもしろかったけど、まあ、
わたしはラノベ読んで楽しい年齢じゃなくなったんだなあ、
ということを痛感した時間でもあった(笑。

★★
20081203読み始め1214読了
小説 カ行 / comments(0) / trackbacks(0)
栗田有起『蟋蟀』
栗田有起『蟋蟀』筑摩書房、2008.9、206p、1500-

サラブレッド
あほろーとる
鮫島夫人
猫語教室
蛇口
アリクイ
さるのこしかけ
いのしし年
蟋蟀
ユニコーン


短編集。
わたしの家系の女性はほとんど、人の手を取っただけで、
その人の今後が「見える」力を持っている。
ある意味サラブレッドであるわたしは、能力を生かして占い師になった。
初めて好きになった彼の手をつないだとき、彼の未来が見えた。
わたしのいない未来が。
こんなに好きになったのに。

大学の同期だった鮫島と結婚したのは25歳、3年後に離婚した。
鮫島はゲイで、いつもノンケの男性に恋をして乙女的に苦しんでいる。
その母が余命宣告をされたとき、友情にかられて結婚したのだ。
わたしは今は、別の男性と暮らしているが、
入院している鮫島の父の見舞いに行くことになった。鮫島夫人

13歳の時、自分の中にいる馬の存在に気づいた。
美大を卒業し、デザイン事務所に就職してからもずっと、
馬は私の中にあった。
目をこらすと、他人の中にいるものを見ることもできた。
女性の中にいるのは、例外なく動物だった。ユニコーン
-----------
以上3作がマイベスト。
あ、表題作入ってないや。

でも、この人の、もっと長い話読みたい。
いちばん好きなのは『お縫い子テルミー』なんだけど、
あれでも中編だし。
この短編集は悪くないけど、不条理系に片足つっこんだみたいな、
ちょっと座りが悪い感じ。

★★★
20081210借
小説 カ行 / comments(0) / trackbacks(0)
倉橋由美子『ポポイ』
倉橋由美子『ポポイ』福武書店、1987.10、
166p、1000-


前世紀の末に首相だった祖父の元へ、ふたり組の
「今世紀最初の純正テロリスト」が乱入し、
密談ののち若いほうが切腹し、年長の男がそれを介錯し、
その刀で自刃したという事件が起きたのは数日前のことだ。
しかもその直後、祖父は脳梗塞で倒れ、今も意識が戻らない。
私、来栖舞は、その落ちた首が装置につながれ、存命していることを
婚約者の佐伯さんから知らされる。
しかもその生首を預かってほしいというお願いつきで、だ。
運ばれてきた首は、古代ローマ風の美青年だった。
舞は首に「ポポイ」と名をつける。ギリシア語の悲嘆を表す感嘆詞。
ポポイから、あの日起こったこと、その意図や背景を聞き出すことが、
舞に漠然と期待された。そして、舞とポポイの、同居生活が始まる。
-----------
初読は高校生のとき。ついにAmazonで購入(だって絶版なんだもん)。
といいつつ、1年以上ここに書くのをさぼってたけど。。
倉橋の作品は全体に好きだけど、この『ポポイ』は頭抜けて破格に好き。
もはやこの理由は理屈じゃない気がするな(笑。
首との対話の内に、生と死、哲学、または美学が語られる。
多くは、美しい音楽をBGMにして。その気配。
1年に満たないその生活が終わるとき、舞が埋めるのは首だけでなく、
舞自身の少女期の終わりだ。

最近『シュンポシオン』を読んだばかりだったので、人物相関関係も
しっくりきた。倉橋の「さん」づけの人物の描写はよいね。

ネタバレもいいとこだけど、いちばん好きな箇所を抜き書き。

予定してあつた無花果の木の下の軟らかい土をシャベルで掘つて首を埋める。最
後に見た時、首はまだ目を開けてゐた。私はヨハネの首に接吻したサロメほど悪
趣味ではない。首が湿つた土の中で気持ちよく眠り、冬を越して、来年の春に芽を吹
いて、綺麗な花を咲かせてくれれば素晴らしいだらうに、と首のために願ふにとど
めよう。秋の気配を運ぶ冷たい朝の風が吹いて、目にしみたかと思ふと、どこかの
栓が緩んだかのやうに涙が出た。犬のグルダが哲学者風の皺を寄せて近づいて
きた。ここを掘り返してはいけませんよ、とよく言ひ聞かせておかう。そしてポポ
イの墓を立ててやらなくては、と思ふ。ポポイの墓。戒名はタナトス。享年零歳。
(165.9-166.3)

★★★★
小説 カ行 / comments(0) / trackbacks(0)
木地雅映子『氷の海のガレオン/オルタ』
木地雅映子『氷の海のガレオン/オルタ』
ピュアフル文庫、ジャイブ出版、2006.11初版、
2007.10第2刷、217p、540-

氷の海のガレオン(1992)
オルタ(2005)
オルタ追補、あるいは長めのあとがき

解説:藤田香織


「自らを天才だと信じて疑わないひとりの娘がありました。
斉木杉子。十一歳。―わたしのことです。」(6.1-2)
何で生計を立てているかわからない父と、詩人の母。
高校を中退し、農業にいそしむ兄・周防と、
ひとつ下の弟・スズキの5人家族。
どうもみんな、それぞれの場所で浮いてしまう斉木家の子どもたち。
そんなとき杉子をなぐさめるのは、ハロウと名づけられた
庭のナツメの古木。
学校なんてなければいい、こんなに我々が浮くのは、
この両親に理由があるのではないか、と思い始めた初夏のころ。
昔から見る不思議な夢が、新たな展開をみせ始める。
-----------
友人からの誕生日プレゼント。
1行目にノックダウンされる人は多いと思う(笑。
「楽土」とかのことばの使い方が少し梨木っぽい感じ。

初めて読んだときに、少し考えることがあったせいか、
いやあ、落ちた落ちた。
涕泣しながら読んでたもんなあ。
内容にあまりに直撃されてしまったので、
客観的な判断があまりできないけど、
小説としてはおもしろいのかな。どうだろう。

「オルタ」もなかなか衝撃でよい。
アスペルガーは、避けては通れない題材だなあ。

それにしても、このピュアフル文庫のラインナップが
すごい。学校生活に違和感を持ってて、大人になったら
少しは楽になった気がするけど、どうしたって
居心地が悪い気がする、って大人、特に30代女性を
ターゲットにしたと見た(笑。
でも松村栄子は読みたいな。『Takingアスカ』か。

20080110貰う。現在のところ評価不可。
小説 カ行 / comments(2) / trackbacks(0)
久世光彦『燃える頬』
久世光彦『燃える頬』文藝春秋、2000、212p、1857-

そのとき、ぼくは15歳で、母と姉を東京に残して、
父とふたりでその日本海側の町に疎開していた。
高級古書店を営んでいた父が一緒に疎開させた山ほどの本に
囲まれ、父と作った森の小屋に、ぼくたちは住んでいた。
ひたひたと迫る戦争の影と、どうやら抗えない運命。
3人の仲間とこっそり珈琲を飲む《狼屋》、
廃墟となった元映画館《鳳座》、森とそこにある《小袖の滝》が
ぼくたちの遊び場だった。
森の中の湿地、通称《恋ヶ窪》の洋館にあの人が越してきたのは
その年の春。

15歳だった春から夏への短い時間を、ぼくは決して忘れないだろう。
-----------
設定だけでだいたい何が起こるかわかるような話だけど(笑)、
息苦しいその15歳の時間の描写は秀逸。
美しすぎると言ってもいいほど。
白秋の「紺屋のおろく」の引用もよい。

夏夫、ほんとうの光って、二つしかないのよ。
一つは、深く、深く、目を閉じたとき、
永劫の彼方から射してくる鬱金色の光。
夏夫、もう一つは? ??ぼくは頷いて答える。
??それは、夏の朝、山枇杷や黄楊の葉に宿った露の珠に
戯れかかる、森の光です。(208p)

20071003借
★★★
小説 カ行 / comments(0) / trackbacks(0)